《FLAT HOUSE in Kyushu》 発刊のお知らせ
去る7月15日、FLAT HOUSEシリーズの新作《FLAT HOUSE LIFE in Kyushu》が書店に並びました。企画が生まれてから5年もの歳月が経ち、ようやっとのリリース。その間に転居が2回、暮らし方も随分変わりました。今見直すとこの5年の間のことがいろいろ思い起こされ、九州との二拠点生活にちょうどシンクロすることからもさながらクロニクルのような一冊となった感です。
ここで本書「はじめに」を一部リライトしたものを掲載します。
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さかのぼること今から5年前の2012年10月、編集プロダクションのFさんという男性からメールが届いた。某出版社が平屋の本を出したがっているので監修してくれないかという内容だった。ちょうど《FLAT HOUSE LIFE vol.2》の入稿が迫っていたので、それが終わったらお話伺いますと返信した。校了が終わった12月初旬、JR中央線/国立駅北口でFさんと出版社のKさん2名を買い替えたばかりのキャンパーに乗せた。Fさんは小柄でにこやかな男性だったが、袖口からちらりとトライヴァルのタトゥーを覗かせていた(後で総合格闘技をやっているということが判明)。Kさんは目鼻立ちのはっきりした色白の女性で全身真っ黒な服で固めていた。想像と全く違うキャラクターのお二人だったが、このイメージギャップというのも楽しいものである。
コンロでお茶を沸かしながらご依頼内容をおさらいし、著者として関わる方ことで手打ち。しかし他社から既刊と同じ内容で出すならばコンセプトを変えねばならない。そこでFさんから「地方の平屋事情というのはどうでしょう」という提案が出た。ちょうど西日本への転居も考え始めていたので、取材は住みながらじっくりできる。にわかにその案が現実味を帯びて来て、その方向でまとまった。その後福岡と東京の2拠点で生活することが決まり、かくして新刊は《FLAT HOUSE LIFE 九州版》に決定する。
とはいったものの、既刊に比肩するレベルの平屋がどの程度あるのかの確証もなく、そもそも取材にどのくらいの時間を要するのかなどなど皆目見当がつかないことだらけ。しかし、初めて住む九州はあらゆる点で「未知数」で、その分期待も大きかった。関東でも関西でもない独自の文化を築く九州には、予想もしないような面白い物件が必ずや待っているはずと、パースペクティブは暗くなかった。またその「未知数」に賭けることは九州で暮らすことへの強い動機付けにもなるし、転居後のライフワークになるだろう「古平屋探訪」にひとつミッションを与えてくれるものと大いに仰望した。
かくして13年夏、二拠点生活を開始。在福中は住まいの周辺を極力探訪した。暮らしてみれば何ということはない、平屋は少なからずあった。九州でできた友人からの紹介や、読者からの情報によって見られた物件も。おかげで転居から4年の間に十数棟のFLAT HOUSEの取材を終わらせることができた。そればかりか今では空き平屋の改修や再生を仕事にするまでにも至っている。改めて九州の“手つかず加減”には瞠目するばかりだ。
地価が低いため持ち家が多いのも九州の特長だが、関東のFLAT HOUSER同様古い物をこよなく愛し大切に使うような住人たちばかりで、住処にもその精神が反映されていることはいわずもがなである。また今回特筆すべきはシリーズ初のセルフビルド平屋の登場だ。そして筆者が改修に関わった米軍ハウスのリノベート前後比較も初の試み。明るくて大らかな人柄の九州人が暮らすFLAT HOUSE全10棟をじっくりご堪能いただきたい。
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というわけで、書店にお立ち寄りの際はぜひお手に取ってご覧になってみてください。
橙色のビタミンカラーのカバーに九州の白抜きが目印です。
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