書籍・雑誌

2017.08.14

《FLAT HOUSE in Kyushu》 発刊のお知らせ

去る7月15日、FLAT HOUSEシリーズの新作《FLAT HOUSE LIFE in Kyushu》が書店に並びました。企画が生まれてから5年もの歳月が経ち、ようやっとのリリース。その間に転居が2回、暮らし方も随分変わりました。今見直すとこの5年の間のことがいろいろ思い起こされ、九州との二拠点生活にちょうどシンクロすることからもさながらクロニクルのような一冊となった感です。

ここで本書「はじめに」を一部リライトしたものを掲載します。

*


 さかのぼること今から5年前の2012年10月、編集プロダクションのFさんという男性からメールが届いた。某出版社が平屋の本を出したがっているので監修してくれないかという内容だった。ちょうど《FLAT HOUSE LIFE vol.2》の入稿が迫っていたので、それが終わったらお話伺いますと返信した。校了が終わった12月初旬、JR中央線/国立駅北口でFさんと出版社のKさん2名を買い替えたばかりのキャンパーに乗せた。Fさんは小柄でにこやかな男性だったが、袖口からちらりとトライヴァルのタトゥーを覗かせていた(後で総合格闘技をやっているということが判明)。Kさんは目鼻立ちのはっきりした色白の女性で全身真っ黒な服で固めていた。想像と全く違うキャラクターのお二人だったが、このイメージギャップというのも楽しいものである。

コンロでお茶を沸かしながらご依頼内容をおさらいし、著者として関わる方ことで手打ち。しかし他社から既刊と同じ内容で出すならばコンセプトを変えねばならない。そこでFさんから「地方の平屋事情というのはどうでしょう」という提案が出た。ちょうど西日本への転居も考え始めていたので、取材は住みながらじっくりできる。にわかにその案が現実味を帯びて来て、その方向でまとまった。その後福岡と東京の2拠点で生活することが決まり、かくして新刊は《FLAT HOUSE LIFE 九州版》に決定する。

とはいったものの、既刊に比肩するレベルの平屋がどの程度あるのかの確証もなく、そもそも取材にどのくらいの時間を要するのかなどなど皆目見当がつかないことだらけ。しかし、初めて住む九州はあらゆる点で「未知数」で、その分期待も大きかった。関東でも関西でもない独自の文化を築く九州には、予想もしないような面白い物件が必ずや待っているはずと、パースペクティブは暗くなかった。またその「未知数」に賭けることは九州で暮らすことへの強い動機付けにもなるし、転居後のライフワークになるだろう「古平屋探訪」にひとつミッションを与えてくれるものと大いに仰望した。


Img_0134

かくして13年夏、二拠点生活を開始。在福中は住まいの周辺を極力探訪した。暮らしてみれば何ということはない、平屋は少なからずあった。九州でできた友人からの紹介や、読者からの情報によって見られた物件も。おかげで転居から4年の間に十数棟のFLAT HOUSEの取材を終わらせることができた。そればかりか今では空き平屋の改修や再生を仕事にするまでにも至っている。改めて九州の“手つかず加減”には瞠目するばかりだ。

地価が低いため持ち家が多いのも九州の特長だが、関東のFLAT HOUSER同様古い物をこよなく愛し大切に使うような住人たちばかりで、住処にもその精神が反映されていることはいわずもがなである。また今回特筆すべきはシリーズ初のセルフビルド平屋の登場だ。そして筆者が改修に関わった米軍ハウスのリノベート前後比較も初の試み。明るくて大らかな人柄の九州人が暮らすFLAT HOUSE全10棟をじっくりご堪能いただきたい。


というわけで、書店にお立ち寄りの際はぜひお手に取ってご覧になってみてください。
橙色のビタミンカラーのカバーに九州の白抜きが目印です。


Dsc03560

| | | Comments (0) | TrackBack (0)

2017.04.20

《FLAT HOUSE LIFE》復刊のお知らせ

:

2009年に上梓しました『FLAT HOUSE LIFE 』、そして12年に上梓しました『FLAT HOUSE LIFE vol.2』は、出版元の事実上の消滅に伴い4年もの間絶版状態にありました。その後幾度となく復刊の話も浮上したものの寸でのところで立消える、を繰り返して来た経緯です。

昨夏、トゥーヴァージンズというあまり耳にしたことのない出版社から復刊のオファーが舞い込みました。それもそのはず、書籍販売の営業アシストをメインの事業とする会社で、出版部門をここ最近立ち上げたといういわば若い会社だったのです。

僕の場合、インタビューや取材の話が来た際は「先ず友達になりましょう」と伝えており、今回も同様の返答をしました。後日2名の男性編集者がやって来たのですが、これまた若い。まあどうせまた同様のことになるのだろう、過度な期待はせずにお手並み拝見とタカをくくっていたところ、予想外にきちんとした青写真と行程案を用意して来てくれ「おや、いつもと違うな」と感心。これまでは編集者が上司の決裁を差し置いて先ずこちらに打診というパターンが多かったので、彼らの“既に社内コンセンサスが取れて来ている感”には意外でした。

2冊を合本にすること、サイズを大きくすることことなどこちらの意向が丸々受け容れられ、その後は彼らの情熱と行動力であれよあれよという間に編集作業諸々も終了、気がつけば校正紙の束に赤ペンでチェックを入れる日が来ていたという経緯。この期間の彼らの集中力は見事なものでしたが、それもそのはずふたりともがFLAT HOUSERだったのです。それまでのことがあるとはいえ彼らを見くびっていた自分を反省しましたが、これまでのどの社とも復刊に対する熱量と取り組み姿勢が違っていたのはそういうことだったのかと腑に落ちました。

斯くして今春『FLAT HOUSE LIFE 』と『FLAT HOUSE LIFE vol.2』は30ページを加えた400ページとなって再編集され、版型もB5にサイズアップし『FLAT HOUSE LIFE 1+2』とタイトルも改にめでたくリバース致しました。これもひとえに熱きFLAT HOUSER編集者たちのおかげと感謝しております。諦めずにいれば必ずや手を差し伸べてくれる理解者が現れるのだと確信した次第です。


それにしても改めて本を見直すとその数に愕然、判っているだけでも既に半数近くが解体されてしまっていました。特にこの2~3年再開発のピッチがヒステリックに急加速しているように映ります。税制の「改悪」と東京五輪の「開き直り開発」の煽りが首都圏を軸に全国波及しているのかもしれません。今回あたかも辞典のような姿にトランスフォームしたこのまことにクレイジーな一冊が、全国の古家、古民家、米軍ハウスや文化住宅を愛好する人々の念を改めてパイルアップし、新しい世代にその熱が反映してくれたらと願っています。

                                    
20170420_92900


| | | Comments (0) | TrackBack (0)

2014.06.27

そして梅雨まっ只中、本日発売

(前回のつづき)


フタを開けてみれば断られ続けた「しもた屋」本は13回の版を重ね2冊目を出すまでに至った。が、そんなことはG社のオジさん達には関係のないことだった。ウチから出した本の実績こそがすべてということだったらしい。もう気持ちの切り替えに注力することにした。

拙著スタッフの大杉氏から、フットサルで会う人に拙著ファンがいると以前からたびたび聴かされていた。そのYさん(彼もSさんなので名前のイニシャルの方で)は出版社勤めで渋谷のロゴスギャラリーでの拙著展にも来てくれていたそう。彼にその企画を振ってみましょうかということになり、一度ご来訪いただく運びとなった。

受け答えはしっかりするものの、もの静かで口数の少ないYさんは、前回のG社Sさんほど発熱量は高くなかったが実直な印象の御仁だった。本の内容を話してみたところ好感触。その数日後の社内会議で企画はあっさり通過、拍子抜けしてしまうほどの速度で発刊は決まった。出版社によってこんなに違うものかと毎度驚かされる。一昨年末のことであった。


翌年5月から取材を開始し半年かけて終了。年明けから執筆に入って今月脱稿したという経緯だ。そして創案から実に3年の歳月が経った今日27日その本が店頭に並ぶ。


*

Dsc09966
[取材初日ノルブリンカにて]

*

タイトルは『HOME SHOP style』とした。自宅の一部を改装し「店舗兼住居」として暮らす人々とその家を紹介した一冊。概ねは賃貸の平屋だが二階建て以上の物件もありマイホームのケースもある。共通するのは家と店を兼ねていることと、汗水垂らして好きな仕事を楽しくする住人の姿。また「大樹の陰には寄らない」という姿勢も共通する。とにかく既成概念に囚われず、我が道を行く12世帯が一誌上に会した体だ。


Dsc09358


この本を書くにあたって、昨今の行き過ぎた仮想経済依存へのアンチテーゼが少なからず作用した。巷にはにわかに景気復調の兆しありというような空気が流れ、雇用もウナギ上りだと報道番組なんかではやっているけれど、どこまでのっかっていいものやら甚だ疑わしい。

ちょっとした風向きの変化であっさりと状況が変わるのが昨今。実態経済を出し抜き仮想経済の方が景気のイニシアティブを握る現代では、極短期間で状況が豹変しその影響は津波のごとく私たちの暮らしに襲いかかる。


そんな風景を幾度となく見せられて来た者としては、この状況にハイそうですかそいつはよかったですねとは言い難い。まさしくバブル景気崩壊後がそうだったように、またいつどんな急転直下ならぬ急転悪化にさらされるか分かったものではない。

しかもよくよく見れば現在人手不足と騒いでいるのはサービス業や工場、介護といったルーティンワークや肉体労働の現場であり、決して大企業の事務職といった職種ではない。その部分の人員は構造不況といわれていた20年前からだって足りていなかったのではなかったか。


*


20140626_182818


*


今回の本は、奇しくもそういう「資本家の気まぐれによる大津波」から身を隔つことを本能的にやっている人たちの好例集のような一冊になった。FLAT HOUSEシリーズでは暗喩的に都下型オルタナティブライフを提案するものだったが、今作はもっとダイレクトに推奨する内容だ。

先のリーマンショックの時には、大手企業の仕事を多く請け負っていた友人デザイナーがコンビニでバイトを始めたという光景も見た。これは決して他人事ではなく、このまま請負い型の仕事ばかりを続けていればいつ自分の身に降り掛かって来くるやも知れぬ出来事として覚悟しなくてはいけないと当時強く肝に銘じた記憶がある。

そのあたりのことは本書のまえがきに託すことにするが、公私共にいろいろなことがあったこの2年の間、とにもかくにも早くこの本を出さねばと一心に取り組んで来た渾身の一冊、なにとぞご高覧を。

*

20140626_183713_2

20140626_183429


20140626_183616


20140626_183901


20140626_183932


20140626_183731


20140626_184312

20140627_161645_3


| | | Comments (4) | TrackBack (0)

2014.06.24

新作、書き終わりました

:


今月末に発刊される新作の入稿が先日完了した。


この本の創案はちょうど震災の年に遡る。
暑さ失せない晩夏のある日、体温の高いメールをくれていた拙著ファンというG社の若い編集者Sさんが訪ねて来た。我が社からも平屋関連の本を出しませんかというご依頼だったが、FLAT HOUSE LIFE 続刊の取材が始まったばかりだったため色好い返事ができなかった。

そこでこちらからこんな提案をした。FLAT HOUSEの取材をしていると、遊ぶように暮らす面白いライフスタイルの変わった人々に出会うことが少なくない。似たような暮らし方をしている人たちが平屋住人以外にも居たため、FLATHOUSEの枠をはずして別のファイルにまとめたいと常々考えていた。そんな感じの本はどうか、と。

すると大いに乗ってくれたため、数日かけて提案書を書き上げた。それを持ってS氏は社内会議にかけたが、結果はNG。確かにこれまでの拙著と比べ住宅よりも暮らし方にフォーカスした内容だったので、少々難しかったのかもと思い主題の角度を若干住宅よりに戻してリライトした。

しかし結果は同じだった。その後数ヶ月いろいろ手を尽くしたが発刊に近づく事はなく、結局G社からの上梓は叶わなかった。後日Sさんからは丁寧な謝罪メールが来てこの話は秋と共に終わった。


Img_6198_1

ああ、FLAT HOUSE LIFEの時もこうだったな、と思い出した。当時何社かに提案書を持ち込んだが、どこも「誰が古い平屋の本なんて買うんだ??」という反応だった。担当者からの伝え聞きだが、そう言ったのは全員管理職=50代以上の男性社員、いわゆる「オジさん」たちである。世の会社の会議で決定権を持つのはほぼこの年代のオジさんたちだ。


彼らは殆ど「暮らし」というものに興味がない。料理は大抵できないし洗濯も掃除もしない。するといってもそれは趣味でか仕方なしの気まぐれ程度で、生きるために日々やっているような人は少ない。そういうオジさんたちはリアルな暮らしには無関心で、心のどこかでそれは女のする仕事だからと見下している感すらある。しかし、それは生きて行く上でもっとも大切な仕事であり、それがあっての日々の生活なのだ。


我が家に来てもキッチンなどには立ち入らず、入って来て「わあ〜」と上気するのは大抵女性。カトラリーや器具をじっくり観察する男性はほぼいない。(もちろん例外の紳士諸氏もいます!)
尤もかくいうワタクシも年齢は立派なおじさんだが、そういうナマの生活の部分にキチンと向き合っている男性は、年齢が達していても決して「オジさん」ではないと提議付けている。であるからして、そんな「オジさん」たちには平屋はなる「貧乏長屋」「しもた屋」にしか映らないのだ。

*

彼らの引き出しにある古い家への解釈といえば、田舎暮らし的古民家あたりがギリギリなのだろう。信州の古い炉端付き農家の中身をすっかり和モダン調に刷新し、高そうなオーディオセットをうやうやしく置きビバップジャズに身体を揺らすオジさんの姿をTVで観たことがある。

それでも新築マンションなどよりはずっと良いとは思うが、そのくらい判り易い濃い目の味付けにしてやらないと食いつかない。そういうのが、かの世代の男性大半の解釈限界のような気がする。

考えてみれば都心マンションに好んで住み、それを所有することこそが人生のステイタスと信じ切っているような一元価値感のサラリーマンオジさん編集者に、戦後建った古い平屋の味わいへの理解を求めることが土台ムリだったのかも知れない。そういう解釈範囲の人々があらゆる組織の決定権ある席にことごとく陣取っているのだから、シックぶった樹脂製サイディングの新築住宅やツリ目のテカテカした自動車に囲まれるはずである。


(つづく)

*


Img_2245


| | | Comments (0) | TrackBack (0)

2013.12.03

静かにお詫び、お知らせ、&喜び

*

 

既にお気づきの方もいらっしゃるかとは思いますが、現在『FLAT HOUSE LIFE』『FLAT HOUSE LIFE vol.2』の販売が停まってしまっています。当書は、発行元(マーブルトロン)と販売元(中央公論新社)が違っており、前者が後者の販売口座を借りて商品を流通させていましたが、それが今夏両社の契約切れ更新なしという、通常では起こりにくい事態に陥ったというのです。正式に連絡があったわけではなく関係者からの伝え聴きですが、書籍自体はまだ出版社に存在するものの流通は不全という、ジツに不可解な状況にあるようなのです。

 

 

Img_0067_2

 

 

 

こんな話をしてイイものか迷うが、著者印税はここ1年未払い(注1)。今春の終わりあたりから昨年交代した新代表はおろか経理社員でさえ電話がつながらない(というか出てくれない)状態となり、社の存続状況すら不明。当社刊のほとんどが買えない状況にあるということだけは明確なため、どうにか販売だけでも復旧させられないか関係者やほかの著者らと連携しながら画策している最中です。書店に行ったが取り寄せもできないという苦情を少なからずいただいておりますが、近日中には某かの結論が得られると思いますので、詳細がはっきりし次第またご報告致します。皆さまにはご迷惑をおかけして大変申しわけありませんが今しばらくお待ちください。

 

 

:

 

 

そしてもうひとつ、いったいどーなった!?とあちこちで訊かれる『FLAT HOUSE style』の件。こちらもごシンパイをおかけしております。戦後ヤミで出回った3合も呑めばツブれる粗悪酒=カストリ酒から皮肉った「カストリ雑誌」の呼び名よろしく、3号でツブれるという様相は正に我が誌の現在。そうならないようにとフン張っては来たものの、なに分自費出版。印刷するたびに大金を準備しなくてはならない上、我が国の書店はほとんどが「委託販売」であり、料金回収は2ヶ月以上先になります。その間のやりくりがこれまたまことにしんどい。

 

そしてもうひとつは「流通」の難しさ。倉庫から事務所までの本の運搬は2名で、発送や管理はほぼひとりで行っているため、出版した後も時間やエネルギーをそちらに持って行かれてしまいます。もちろんそうしたことは当初からの想定内ではありましたが、始めるは易し継続は難しといったところ。各号すべて買い取りにしてもらえたならばそういう問題も大幅に解消されるのですが、委託は月末に計算書のやり取りをたくさんの書店としなくてはならず、これを本業と両立させるのがまた至難の業。

 

Photo

 

 

しかし3巻の発行を終え創刊から3年が経った現在、随分と問題点や改善点を洗い出せ発見は多々。また、創刊号と2号はおかげさまで完売することができました(3号は一部書店で現在も取扱中)。2巻の増刷も検討しておりますが、次号分の取材は完了しているので資金調達および流通の確立を急いでなるべく早く再出発したいと考えています。

 

 

*

 

 

というようなジツに気分のすぐれない状態のまま九州転居を敢行した今夏、福岡で知り合った内装大工のU氏から驚くものを見せられた。氏ご所有の拙著数冊なのだが、これがまた読み古され加減がスゴいのである。すり切れたカバーにアタマから飛び出すたくさんの付箋。聴けばバイブルのように繰り返し読んでくれているということで、自宅では元より現場、はたまた運転中も赤信号で停まるたびにページを開いているという(ちょっと危ない)。こんなふうになるまで読み返してもらえる本が果たして世の中に何冊あるだろうか。変わり果てた我が分身を見てくすんでいた気持ちが随分と上向きとなり、図らずも本を書いて良かったと再び静かに喜べる時間を九州でもいただいた。拙著をお持ちいただいている読者のみなさんに改めて厚く御礼を申し上げたい。

 

 

 

Dsc01541

 

 

 

 

Dsc01544

 

最後に、もうひとつお知らせを。現在竹書房から上梓する新刊の執筆に入っている。発刊は2〜3月あたりの予定。FLAT HOUSEシリーズとはまた切り口の違った趣きの書に乞うご期待!

 

 

 

 

(注1)
のちに元代表のK氏から連絡が入り、印税の半分が支払われた。

| | | Comments (0) | TrackBack (0)

2011.12.09

光陰イヤのごとし



師走に入って1週間が経過。今年もまた
「1年早ッ→トシ取るのはイヤね」を連発する時節がやって参りました。
もう少ししないと今年を振り返る気持ちの余裕が生まれないけれど
生まれて初めてのイヤな体験をたくさんした1年でしたね。


さて、お知らせをふたつほど。


ひとつめ。
既にTwitterやmixi,Facebookなどでは告知しましたが
今度の日曜(11日)に表参道で久々のライブトークイベント
【FLAT HOUSE meeting】を行います。

これまでは(九州大学旧校舎内でのイベント以外)
中央林間『FLAT HOUSE cafe』そして
狭山の『JOHNSON cafe』と都下南北の
ホームグラウンド的平屋カフェで行って来ましたが
今回は都心のアウェイ開催、少々闘志がみなぎっておりますー


山手線の内側開催は滅多にやりませんので
(別にイヤというわけではなくお声がかからないだけです)
特に前回が遠くて参加が叶わなかったという方は
この機会にぜひご家族ご友人お誘い合わせの上いらしてください。

尚、全員着席での開催となっておりますので
いらっしゃる際は下記までメールでご予約をお願い致します。
ギリギリですが未だご予定のない方はゼヒ。
(現時点であと2〜3席残っているそうです)

info@towndesigncafe.com


会場ではオリジナルグッズのほか、先月末発売の
『木の家に住みたくなったら』も販売致します。


 ◆場所   『TOWN DESIGN CAFE』 
        http://www.towndesigncafe.com/

 ◆日時   12月11日(日)
       open 16:30 start 17:00 (20:00終了予定)
  
 ◆料金   3000円 軽食+2drink(アルコールは1drink)

Fhm_1128


トークの内容はもちろん、「cafe」という場所でやるからには
飲食物はやはりキチンとしたものを然るべき量で用意したい
というポリシーのようなものがあります。
だって自分が行くことを考えれば
いくら一等地でやったり雰囲気の良い場所だったりしても
口に入るものがさびしかったら大きくガッカリしますからねえ。


これまでの会場はその辺りはしっかりクリアできた内容だったと
自負していますが、今回は場所柄正直ちょっと心配していました。
が、日常からマジメな内容のランチを提供しており、ありがちな
「cafeメシ」にならぬよういろいろ考えているという報告。
冷凍食品の類いは一切使わず、食材は近隣の個人商店から仕入れているそう。

当日は我が家近所にあるこれまたマジメなパン屋さんの
ゴマと全粒粉のパンを使ってオリジナルサンドウィッチを
お出しする予定ですが、さて皆さんのジャッジはいかに〜
(ご出席の方々、忌憚のないご意見を!)


*********************


ふたつめ。
今出ている『コダテRELIFE+』(扶桑社刊)という
ムックに僕のインタビューが掲載されています。

「随分とプライベートなおハナシをしてますねえ〜」と
先日見えた客人に評されましたが、赤裸々とまではいかないまでも
ある程度はツッコんだ話をしないとインタビューなんてものは面白くない。
会社員時代からバイト時代を経て現在までの話を
手短かながら結構細かく話しています。


とても高い洞察力・解析力をお持ちの女性インタビュワーで、
インタビュー中はとても気分の良い時間でしたが
上がって来たゲラを拝見したら聞き違い勘違いのオンパレード〜♪
仕事そっちのけで半日かけて修正しました。

まぁ音声での伝達とは所詮こんなものです。
同じ文筆業として僕も身に憶えあり、
しばしば書き損じを見落とすことも。
これを機により一層注意しなければと自責致しました。

顔は極力出したくない…という要望は
「インタビュー記事に顔ナシなんてあり得ないでしょ。
なに中学生みたいなこと言ってんの」とすっぱり却下、
しかしセンスの良いカメラマン氏の腕のおかげで
実物以上に良いカンジに写っております。

20111115_152850


表紙は我が『FLAT HOUSE cafe』。
この本、狙いと内容はとても良いのですが、
如何せんデザインが…というのが私を含め周囲大方の意見。
長く所有したくなるようなデザインを目指して頂きたいと
愛情を持って叱咤する次第です。
さて皆さんはジャッジはいかに(こっちも)

| | | Comments (6) | TrackBack (0)

2011.11.30

もし木の家に住みたくなったら…どうぞ 

ここ最近なにかと建築に関する仕事から
お呼びがかかるようになった。

これまでもちょくちょく描かせてもらっていたエクスナレッジ社は建築に携わる人なら誰もが知っている『建築知識』という刊行誌を発刊する専門出版社で、ここからもかかる声が増えた印象。マジメで質実剛健な社のお手伝いをするのは毎回とても気持ちよく『建築知識』の元編集長 藤山さんとは一昨年編んだ『スパッとわかる構造建築』という本でご縁が深まった。

藤山さんからは「イラストをふんだんに使ったストーリー仕立ての建築本を作りましょうよ」という話を以前からいただいていた。それは、数年前に某造船会社から依頼されイラストとマンガだけで綴った工作マニュアルを彼がひどく気に入ってくれたところに端を発していたのだが、今年遂にその建築バージョンとして具現化する運びとなった。


Img_6235_1


5月、「木造建築を“木”の角度から包括した本にしたい」という青写真を言い渡され、我がFLAT HOUSE styleのアートディレクター大杉氏を伴い制作チームに参加。ライティングの中心には建築家であるアトリエフルカワの古川さん。内容をプロ志向に偏らせないよう紅一点の三島さんがアシスト。

本のタイトルも決まらぬうちにたくさんの建築家や木を専門に扱う関係事務所の見学&インタビューが始まる。秩父の山奥へ森林の現状を見に行ったり伐採現場に立ち会ったり製材所へ社会科見学にお邪魔したりしたのが猛暑始まる7月初旬。その段階でも未だ本のプロットらしきものは生まれずにいた。

一行にエンジンがかかったのは酷暑の続く初秋。記憶に新しい帰宅難民を出した大型台風がやって来た日に我が家へ集合、古川さんと藤山さんの上げたプロットを大杉氏が誌面化し作られた二次ラフをたたき台にして、ライブで僕がそこにイラストをどんどん描き加えてゆく。タイトルも決まり、朝から終電まで時間の許す限り1ページ1ページ丁寧にみんなで話し合い書き上げていった。そしてその後も何回かそんな日を繰り返した。


Img_6271

本来、本を作るのはこのように参加者全員でじっくりと編み上げて行くというやり方が理想、いや、あるべき姿ではないかと強く思う。広告や企業パンフレットなどの制作会議に出席すると「この人たちはいったいナニをする人だろう??」と思うくらいやたらにずらずらガン首が並ぶことがよくある。

しかしモノを作るにあたってアタマ数の多さにさほど価値はない。最小限の頭脳がそれぞれの能力を隅々まで持ち出すことと、それらをブレンドすることにいかに時間をかけ芳醇なものにするかという事の方が重要であったりする。

しかし超・コスト偏重の社会ではそれは軽視され、作り手と受け手の間に調整管理者として堂々と座るネクタイ締めた方々のお給料をひねり出すために「時間をかけない」という一番してはいけないモノ作りの方法が何ら疑われる事なく遂行されているのが現状だ。そのためにできるものはジツに軽薄短小無味乾燥。フレイムだけで仏つくって魂入れずな物々が「でーきまーした♪」とばかりにじゃんじゃん世間に輩出される。

もちろん行程省略・時間短縮の全部が悪いわけではないがそれがクオリティに反映されてしまうのでは良いはずがない。それが証拠に、結局売れ残り廃棄処分になる印刷物の何と多いことか。そういう虚しいサイクルにはいつまでたってもメスを入れられることがない。

逆に本作りの現場では、著者はおろか編集者とすら顔を会わせずに完了することもそう珍しくない。言われたものを言われたまま描いてハイお疲れさ〜んという個室型完全分担スタイルが現在の本制作の主流だ。上がって来たものを見るとどうも描いたものが本文にそぐわずとんちんかんな印象、なのにそのまま書店に並んでしまったりする。


そんな過度ともいえる短縮分業化が当然となった現在においてここまで手間ひまかけて編まれた今書はかなり稀ではなかろうか。制作者が何度も集まっては一緒に取材をしたり内容を吟味したりとジツに贅沢なつくり方をした。僕もイラストレーターというよりは著者のひとりとして参画した意識が強い。


20111130_224112


家作りで言うならば、さながら大工や左官や建具屋屋根屋がそれぞれの技術を活かし合い完成させる在来工法のようなやり方だったのではないか。でもそれは本を作るにあたって昔の人たちが踏んで来た当たり前の順序を習ったに過ぎないのだけれど。

僕たちは自費出版本でその作り方を踏襲しているつもりだが大手の出版社がその古式ゆかしき方法をなぞるのは稀だ。何せ最小限のコストで最大限の利益を生めという大命題を各社員が背負わされているのだろうから。

とにもかくにもこんなに内容と作り方がシンクロした本に携われたことにシアワセを感じる師走の入りなのです。

Dsc01975

タイトルはズバリ『木の家に住みたくなったら』。マンションや人工樹脂でできた建て売り住宅の蔓延にはもう飽き飽きしたという人たちが増加、その反動で在来木造住宅への注目度が高まる昨今。
しかし、いざ住む・建てるとなると何をどうして良いやら。木の種類や家の種類、家そのものや建築方法の選び方、国産材や外来材、植林の歴史、山林の問題など、学ぶべきことは山ほどあります。それらについてとことん解説しながらも楽しく学べる絵本仕立ての実用書に仕上がっています。

カバーの木目は木を3Dスキャナーで読み取りよりリアルな質感を再現したという凝りよう。しかもカワイイでしょ♪

20111130_225429

徹頭徹尾絵でつづられている
建築誌史上初の「絵本」です。

20111130_230232


20111130_230136


20111130_230312


20111130_230108


20111130_230604

『木の家に住みたくなったら』
エクスナレッジ/221ページ/1680円(税込)

| | | Comments (10) | TrackBack (0)

2011.09.11

初秋に出ました!【FLAT HOUSE style 03】

+


あの大震災から丸半年。
その影響も手伝い永らくお待たせしていましたが
(ご心配おかけしましたが〜の方がしっくり来ますか…)
FLAT HOUSE style 03を今月初旬に
やっとこさっとこリリース致しました。

Fhs_vol3_c

【今号の一軒】はコラムも連載している『antos』の
小林寛寿氏が2年前に転居した福生の米軍ハウス。
シャビーと言い捨てるにはあまりに潤いに満ちた
彼特有のセンスが平屋内のそこかしこに繚乱する
まさにワン・アンド・オンリーの一軒です。


Living


Kitchen


すでにちらほらメディアに顔を出している小林邸では
ありますが、バスルームやキッチンにここまで執拗に
寄るのは当誌のみ(笑)


Bathroom_2

また、ページ数も更に64ページにボリュームアップ。各コラムも増ページしながら、ヴィンテージ鉛筆を5万本所有するペンシルコレクターごうだ あきのぶのコラムも連載開始しました。

Chronicle

ここでお詫びがひとつ…。
今号も前号に引き続きの増ページですがそれに
伴い価格も200円アップさせて頂きました。
ゴメンナサイ〜

創刊時、あまり熟慮せずにイキオイと浅いリサーチで
してしまった「ワンコイン」という価格設定は、B5版
フルカラーという装丁にとって少々無理がありました。
あれから1年半が経ち、かかる制作&流通コストも少
しずつ明確になり、これまでの価格では増刷を重ねな
いと続刊制作の費用が生み出せないことが判って来て
しまった次第です。

このままだと当面目標の年間4冊リリースどころか
その半分もままならない可能性も。お手に取って
「あれ?」「高ッ!」と思われた方も多いかと思い
ますが、出版初心者の見切り発車と猛省、なにとぞ
ご容赦ください。

応援してくださる読者・お店の方々のご期待にお応え
することはもちろんのこと、何より3号で「自然廃刊」
するカストリ雑誌のようなことにならぬよう、その分
気張って参りますので今後もお見捨てなきようよろしく
お願い申し上げます〜


*******************


先週末より少しずつながら配本を始めていますので
お電話でご確認の上お近くの書店でお求めください。
尚、ネット通販を行っている店舗もありますので
お近くに取扱店がない方はこちらまでどうぞ。

・ガジェットモード http://www.gadgetmode.jp/

・恵文社 一乗寺店  http://www.keibunsha-books.com/

・往来堂書店  http://www.ohraido.com/index.php

・Sally's funiture store  http://sallys.ocnk.net/

・心斎橋アセンス  http://www.athens.co.jp/

・Benlly's & Job   http://www.benllys.com/index.html

・OFFICE HARADA  http://www.offc-hrd.co.jp/ienotane.htm

・1st Gate   http://www.1stgate.jp/  

・DAY'S FREE 2 http://days-free2.ocnk.net/

| | | Comments (4) | TrackBack (0)

2011.03.13

事後報告になってしまいましたが

本日、福生『DECO DEMODE』で予定されていました
FLAT HOUSE meetingは延期となりました。

店舗ブログ、Twitterでは昨日告知をしましたが
こちらでのアナウンスが事後報告になってしまい
大変申し訳ありませんでした。

今のところ、次号発売のタイミングでの
再開催を検討しております。
詳細が決まり次第お知らせ致しますので
よろしくお願い申し上げます。


| | | Comments (0) | TrackBack (0)

2010.12.18

ギリギリに出ちゃうことになりまして

全国の平屋ファンの皆さん、
また、そうでない皆さんも含め大変お待たせ致しました。
創刊から7ヵ月、『FLAT HOUSE style』
やっと第2号の発売です。


記録的猛暑の余波、いや余熱で、秋とは名ばかりの真夏のような
暑さの9月中旬、そんな最中の取材敢行でした。本来、寒さが
日に日に厳しくなる師走となれば、思い出しにくいはずの夏の酷暑も
サスガに今年は忘れられません。家のディテイルと共にハッキリと
記憶しております~


でも、その甲斐あって良い素材がたくさん撮れ、前号を上回る出来。
ページ数もボリュームアップし、新しいコラムもお目見えします。
またご好評の声を多数いただいていたオール手描きのコラム
『Products Revaluation』も僭越ながら見開き2ページでお届けの運び。


21日に印刷が上がりますので、年の瀬には店頭に
並ぶことと思います。ゼヒお手に取ってみてください~!

H1

【今号の一軒】は埼玉県狭山市にあるちょっと変わった米軍ハウス。
どんなふうに変わっているかは読んでのお楽しみ~。


32

19

築年数が古いのに、オリジナルパーツが多く
残ることも去ることながら、住人の生活センスも抜群です~


26

この部屋は一体??犬も飼えちゃうフシギなスペースが。

3637_2

家賃も激安な上、広い!


41

新コラムは古い平屋を買い、改修しては貸している
九州在住の三児のママさん大家奮闘記。


そして最後にお詫びがひとつ。
いろいろ事情がありまして100円上がっちゃいました…ゴメンナサイ~

| | | Comments (7) | TrackBack (0)