住まい・インテリア

2017.07.08

2017/7月イベントのお知らせ

春〜初夏は新刊の執筆と追取材で家に籠っていることがほとんどだった。
今年の九州はからっとした晴天が多く、良い季節に屋内にいた感があり
短い人生のウチの少ない好天日を棒に振ったような気持ちになっていた。

しかし、書いたモノが本となってでき上がって来るとそんな気持ちも
キレイに反転、また秋があるよと前向きになる。

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というわけで新刊『FLAT HOUSE LIFE in Kyusyu』が今月中旬リリース。
それに伴って今月はトークイベントが関東/九州で3本開催致します。

■7月8日(土)
東京都立川市/ガレリアサローネ

【FLAT HOUSE meeting】第4章《2拠点平屋交互生活のススメ》
この会場は拙著『HOME SHOP style』掲載の《ヨリミチ》の店主が結婚を機にスピンアウトして始めたカフェで、FLAT HOUSE meetingを一番開催しているホームグラウンド的な場所。今回は初めて話すエピソードながら、個人的には今もっとも論じたいアジェンダです。具体的な話と動画が他章より多く、かなり見応え聴き応えある回となる予感です。

会場の詳細はこちら ↓
http://bit.ly/2uU7U1S

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■7月22日(土)
神奈川県藤沢市/湘南蔦屋 T-site

【FLAT HOUSE meeting】第1章+FLAT HOUSE LIFE in Kyushu
数少なかった神奈川エリア且つ初の湘南開催。以前からお誘いいただいていたのになかなか叶わなかった会場でのトークです。ここでは第1章に九州FLAT HOUSEの動画を絡めてお話しする予定。また、施設内には原画やこれまで手がけたプロダクトの展示もしていますので併せてどうぞ。

会場の詳細はこちら↓
http://real.tsite.jp/shonan/event/2017/06/-flat-house-meeting.html

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■7月30日(日)
福岡県福岡市/旧大名小学校:スタートアップカフェ・イベントスペース

【九州大学ソーシャルアートラボ公開講座】
アートを読みかえる~フラットとリアルの思考~

「社会を読みかえる」をテーマに、アートを「世界の見え方や関係性を変える仕掛け」と捉えアートと社会の関係性をあらためて問い直す、九州大学ソーシャルアートラボ公開講座の第2回目に登壇します。ここも初の会場で、天神博多のど真ん中。ちょっと難しく感じられるかもしれませんが、FLAT HOUSEでの暮らし方をアートとして捉え直すという面白い試みで、僕もどんなセッションになるかとても楽しみです。モデレーターは九州大学大学院芸術工学研究院教授、作曲家の藤枝守氏。エディターの小崎哲哉氏もご登壇します。

会場の詳細はこちら↓
http://www.sal.design.kyushu-u.ac.jp/h29_lecture.html

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立川ガレリアサローネは当日のご案内になってしまいましたが、予定がキャンセルになった、偶然近くに行く用があるなどという方はぜひお立ち寄りください。ご来場をお待ちしております〜


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2013.08.04

西南西に進路を取れ

*

しかし、いくら暑いとはいえ随分と間が空いてしまっていた。「ノンビリ更新」がキャッチフレーズのブログとて、5ヶ月は開き過ぎの声多数。確かにブログ開始以来かもしれない。ただ正確に言うなら、読んでくださっている方々には失礼ながらと前置きしつつ、この半年はブログ更新どころではなかった。本業のご依頼でさえいくつか断ったのだから。


ジツはこの7月から九州で暮らし始めている。
きゅッ、九州!?とみな一様に驚いてくださいますが、自分の中では「移住」という意識はなく、単なる「お引っ越し」という程度の位置づけ。しかしながらその準備に春先から今日までを追われ、5月末からは「転居トライアスロン」ともいうべきハードでヘヴィなイバラの道を歩いて来た。オーバーと思われるかもだがこれがまたホント、本が一冊書けちゃうほど。おかげで体重も落ち、顔つきがすっきりしたと褒められたほど(ということはたまにはこういう激務もいいのかな)。


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*

「お引っ越し」の理由はと問われれば、いくつもある。すべて書くと軽くブログ4〜5回分くらいになってしまいそうなので代表的なのをひとつ。「首都圏一極集中にほとほと嫌気がさした」ということ。

あの高層マンションや狭小住宅がぎちぎちに並ぶ姿を「下世話な光景」と評し、何が起ころうと相変わらず「都内」から出ない人々の暮らし方を「イナカッペどもの肩車生活」(この場合イナカッペとは人の出身地ではなくセンスを指します)と揶揄して来たというのに、自分もその界隈に住み続けているという整合性のなさ。その自己矛盾にもそろそろオトシマエを着けたいと思っていたところに、前居の立ち退き騒動や件のゲンパツ爆発が加わって“ぶり” がついた、という次第。

僕が毎度揶揄するのは23区内、なかんずく環状7号線内側あたりのことなのだが、あんな狭い輪っかの中にあんなに大勢が固まって住んでいるのは、やはりどう考えてもバランスを欠き過ぎている。世界の他の都市を見ても過密の度を超しており、人口密度の高さは2位のジャカルタを軽々と抜いて堂々の1位だ。唯一取り柄だった「情報発信の中心」ですらネット社会ですっかりコモディティ化してしまった今、東京都心に褒めるべき面がもう見当たらない。


よく聴く「便利だから」というコトバ、みんな大好きなようだけれど、その便利とは駅・コンビニ・飲み屋メシ屋が近いってことですね?こちとらそんな所で育ったもんでもうお腹いっぱいなんです。「シブヤまで○分で出られる」という台詞にももうヘキエキ。あそこをエルサレムみたいにありがたがっているけれど、料金払ってかまってもらう商業施設があるだけではないか。どこに立ってもビルと道路とクルマに完全包囲、金払わなきゃしゃがませてもくれない。電気がちょこっと停まるだけで何もできなくなる大企業運営の電動テーマパーク。

わずかな緑や痩せた川や埋め立て海辺をうやうやしく扱い、突貫建築のことをナントカフロントだのナントカヒルズだのと呼ばせて高ーいおアシを取る。そのハリボテ加減に薄々気付きながらも、誰もが揉み手で半笑い。もの申すまっとうな大人はいない。「カネが廻りゃあいいじゃないか」。そんな街に成り下がってしまった。

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その空気がだんだん僕の住む都下にも本格浸食し始めて来た。震災があって少し治まっていたものの、1年もしないうちの再開である。通るたびにいいなあと和ませてくれ、周囲の景観の質を上げてくれていた数棟の古い住宅は、ひと月もしない間にチャチな建て売り住宅群に変わっていった。のんびりした都下にもここまで魔の手が伸びて来たか、といった感。

この過剰な人口集中こそが乱開発や利益の過剰追求、そして“人間の管理”を容易にさせているのではなかろうか。特定少数を既得権益にいつまでも吸い付いつかせている原因は、どうやらこの都民の「無節操カタマリ現象」にも大きく起因していると僕は見る。あなたがなけなしの収入から支払っている都税が一体どんなことに使われているか、一度よく調べてみるといい。

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:


このおかしな構造を打壊するには、みんなが全国に散ることだ。彼らはこの偏った人口バランスに依存して生きている。できる者から人口の少ないところにゆくといい。そしてそこであなたが培ったセンスをかたちにしたらいい。人に手足がぶつからないところで伸び伸びと発信できる。首都圏で使う半分の力で倍のパワーが発揮できるだろう。そんな人に来て欲しいという地は全国いくらでもある。タダでもいいから住んで欲しいという空き屋は山ほどある。

それなのにわざわざとりたてて居る理由もない首都圏で、ビルとニンゲンの山にはぁはぁとしがみつき高い家賃やローンを律儀にも毎月払っている。自ら好んでダンゴ状になっている。滑稽を通り越して哀れにさえ映ってしまう。友人も親族もいるけれど、映ってしまうのだから仕方がない。

関東の人間は転勤でもない限り関東を出てはいけないわけではない。地方の人たちが東京に来るように、僕らも軽い気持ちで地方に行ったらいい。同じ国内、自由に別の地に移って違った暮らし方を試してみるといい。自分はここでこうしているしかないという思い込みが、まったくバカげていたと変心する可能性はすこぶる高い。

また地方はあなたがイメージするようなかつての地方とはもう違うということも知るだろう。「上京」は今や死後だ。既にそれに気付いて行動に移している人たちが大勢いる。僕も遅ればせながらではあるけれど、自然とそれに準ずることにしたということである。


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東京都下にも仕事場は残しているが、今後執筆などは九州で行う予定。その拠点がこのFLAT HOUSE。九州でも残存数の少ない米軍ハウスに運良く出会えた。すべての窓がクラシカルなダブルハング(上げ下げ式)というハウスは、都下でももうほとんど見られない。入居にはオーナーの面接をクリアせねばならなかったが、晴れて狭き門を突破。全貌は来年発刊予定の拙著で。


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九州は個人的にも未踏の地に溢れている。その上関東より古いものや建物がたくさん残ってるようだ。こちらの友人たちから情報を聴けば聴くほど期待が膨らむ毎日。今後はブログでもこちらの魅力を紹介してゆきたい。


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2012.02.06

浅き春に今生の別れを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎号イラストを描いている某雑誌のコラムである作家が
「自分の生活の区切りは正月ではなく作品の仕上がりである」
と言うようなことを書いていて、うむナルホドと思った。

しかしそうなると仕事と仕事のスパンがもう少し短い私には
年に何回も正月が来てしまうことになる。それを考えると
自分の場合少々長いけれど「転居」がひとつの区切りに
なっているかも知れない。

 

現に「ドコソコ在住時代」というように住んでいた場所によって
これまでの人生を区切って考えている節があり、そうすることで
何かとてもスッキリと分類できているような気がしている。
(さながらビートルズでいうところの下積み生活の頃を
「ハンブルグ時代」と呼ぶように )

 

 

 

+

 

 

 

 

週明けの今日、遂に近所の米軍ハウスの取り壊しが始まった。
昭和29年築のこの平屋は、半世紀以上も建っていることになる。
一昨年夏頃から4棟のハウスの取り壊し交渉が始まり
最後の一世帯が昨11月に退去、今週その日を迎えることとなった。

 

この家は拙著でも紹介した米軍ハウスで、
その最後の世帯とは私に現居を紹介し入居に導いてくれた
塩原高旨さん一家なのだが、彼らと知り合った15年前ここに
訪れたときのことは今でも忘れられない。

 

明らかに他の平屋より高い切り妻屋根はハウスの特徴。
ベージュのモルタル壁、アイアンの低い門扉、
グリーンにペイントされたの木製ドアと網戸ドア、
トタン屋根の木製ガレージ、うっそうと樹木が茂る庭には
アンティークに近い風合いのアトリウムがあり
「西洋」の空気を醸したファサードだった。

 

立川以西に行かないとお目にかかれないと思っていた
Dependents Houseが、まさか自分の生活圏内に
存在していようとはユメにも思っていなかったので、
驚愕と同時に後悔のようなジェラシーのような
不可解な気持ちに一気に襲われたのを憶えている。

 

 

 

+

 

 

 

一家は1976年からこの家で暮らしていた。ここで生まれ
育ったひとり娘のアンジュリさんは昨年末子供を授かった。
そこまで長期間寝食を共にした家が取り壊されるというのは
いったいどんな気持ちになるのだろうか、経験を持たない
私にはその手のプレパレーションに自信がない。

 

塩原さんは記念にガラス入りのドアを2枚外して持ち帰った。
新しく建てる家に使用するそうだ。彼らと別れた後、独り残
って改めて家をゆっくり見回すとこちらの脳内にあった15年
間の思い出がじんわりとにじみ出て来た。

 

 

彼らにとってこの転居は明らかに人生の大きな節目になるに
違いない。が、ちょうどフリーランスになった頃にこの家を
訪れた私にとっても、今回の取り壊しでひとつの「時代」が
締めくくられたような気がした。

 

 

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しかし胸が締め付けられる光景だ。住人が暮らしていた姿を見て来ただけにことさら寂寥感がつのる。

 

 

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35年の間リペイントが殆ど行われなかったためヤレ具合はかなりの深度だが、本気で直せばまだまだ十分住めるように見える。今後家の稀少性が高まる可能性があるので再利用を考えてはとオーナーにも進言したが、昨年の震災にさらに解体の決意を固めてしまったようだった。

 

 

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ドア、木枠の窓、ライト、金具、スイッチプレート、換気扇など数々の部品をサルベージした。これらは必ずどこかで蘇生させる所存だ。

 

 

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ガレージの天井裏に住み着いていた白猫にももうじき住めなくなる旨を伝えておいた。

 

 

 

 

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それにしても、こういう場面にいくら遭遇したところで持ち主でない限りまったくの無力。せいぜい使える器具や建具をサルベージするくらいしかできることはない、ということにいい加減やり切れなさを感じながら塩原一家を見送った。

 

 

 

 

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2011.10.27

とあるニチ曜日に

ニッチを作りました。

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仕事部屋の西壁に行きが15センチくらいの凹みがあって
入居当時からこうしたかった事をやっと実現させた体です。

手をつけるまでは時間がかかったものの
やってみると短時間で完成。何事もそんなもんです^^

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2011.08.22

『FLAT HOUSE mart』開店しました

+

今月12日、以前ここでも紹介した中央林間の米軍ハウスカフェ
『FLAT HOUSE cafe』の奥に『FLAT HOUSE mart』がオープンしました。
僕のオリジナル商品や原画のほか、同業者の
青山京子さんのアイテム&原画が並びます。
まだ一店舗だけですが、趣は
「フラッグシップショップ」といったところでしょうか。


ずーっと開かずの間のような状態でしたが、実は今年の3月
一気に店内を作り上げてしまおうとセルフリノベーションに入った
ことがありました。それが11日の金曜日、あの大震災の日です。
まさにここで被災したというわけ。

ちょうどcafeで昼食中だったのですが、もちろん大揺れはしたものの
潰れることもゆがむこともなく家は無傷。ケガ人も0。
幸いキッチンのグラスが1個壊れただけで済みました。
耐震強度を理由に取り壊されることが少なくない古い平屋、
そう心配するに及ばないということは実証されたものの
その後のことは言うに及ばず、工期&開店は大幅に遅れました。

そんな紆余曲折を経ての開店。自分の作ったものを専売する場所は
絶対平屋でと念願していたため、このオープンは悪い事続きの今年の中で
最もエポックかつunforgettablyな出来事となりました。


それからこの店には、『ガジェットモード』という
もうひとつ別要素が加味されています。
このブログを定読してくだっさている方はご存知かと思いますが
ロゴとキャラクターを僕が手掛けた友人の店で
埼玉県川越市で開店していたアメリカンビンテージ&英国アンティークを扱う
ショップ。今回の開店を機に、川越を飛び出し我々に合流しました。

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今のところ営業日時は『FLAT HOUSE cafe』に準じます。
ご来店の際は電話でお問い合わせ頂くか
同店webなどでご確認の上お越しください。
通常はガジェットモードの波多野氏が店に立ちますが、
僕も時々顔を出すことがあると思います。
お会いできたら嬉しいですね!

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2011.06.23

FLAT HOUSEの救済方法(1)【after】

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(年初に書いた同タイトルの続編です)


結局、ロケーションが遠隔である理由から数組が辞退。
今回の発起人である真鍋三保さん&友人チームと
僕とマルちゃんこと青山京子さんの
絵描き屋チーム2組でシェアすることとなった。
(とはいえ僕もマルちゃんもかなり遠いんだけどね)

「リノベーション」という言葉が随分一般的になったが、
今回は大規模な施工はあまりなく、床・壁・天井を修繕、
壁を一部抜く、再塗装の3本柱でほぼ完了する見込み。
おっとその前に「清掃」があった。これが肝心だ。

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■水周りはどのハウスもかなり汚れているのが慣例的。
 床材を剥がして清掃しリペイントすることで清潔になる。


僕が今回「イケる!」と踏んだ
大きな理由のひとつには真鍋さんの資質があった。
実は彼女夫妻とは拙著取材以前からのつながりで
お二人の住む米軍ハウスには何度となく足を運んでいたが、
彼らの住居の手の入れ方にはとても注目していた。

物件のいい所を殺すことなく、しかもお金をかけず
ジツに丁寧に生活をハウスに中に造り込んでいたのだ。
(拙著 FLAT HOUSE LIFE 真鍋邸 ご参照を)

僕ら作家チームは片道1時間半の距離に在住のため、
ひと月に来られる回数はたかが知れている。
オーガナイズは引き受けたとしても、実務の主導は
自転車で通える距離に住む真鍋さんになるだろう。

しかし、彼女ならいい店をコツコツと作り上げるに違いない。
僕はそう信じて疑わなかった。


■作り付けの棚は、ドアを付けたり移動させたりした後リペイントしリユース。
 キッチンとリビングの壁を一部壊しカウンターを設えた。
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■カウンター天板は黒に塗装。モノトーンになって
 サルベージして来たUSA製オーブンレンジとも相性が良い。


そんな彼女、近隣で取り壊されていたハウスをしげしげと眺めているうちに仲良くなった解体業の親方を強力助っ人として引き入れてしまった。こんなふうにどんどん味方にしてしまうというのも真鍋さんの才能のようだ。

「ここはこうしたら?」の提案がほぼ翌日には反映されるという彼女自身の機動力も併せ、屋内だけでなく外壁や家具までもセルフペイントで一気に仕上げてしまった。僕らのエリアまでキレイに塗り上げてくれ、ぼろぼろだったハウスはあっという間にすぐ開店できるイカしたハコに変貌、僕の目算は的中した。


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■見違えるようになったリビングルーム床は迷った末白に塗装↑ぶち抜いた5畳のベッドルーム床はそのまま使用することに→  両室併せてL時型のフロアと個室が完成。テーブルや椅子、什器類はすべていただき物や家から持ち込んだもの。
 

その後紆余曲折あったが、腕に覚えのあるママたちが参戦して試食会を重ねてメニューを完成。その名も『FLAT HOUSE cafe』は'11年1月に無事開店した。

ほぼ未経験者だけでスタートしたにも拘らず、玄人はだしのメニューとスタッフの意気込みに、おかげさまで既にリピーターでにぎわう毎日。土日は予約なしでは席も取れない状況に一同ヨロコビの悲鳴を上げている。


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■外壁もセルフペイント。
 ドアのオレンジ色はアイクラーホームからヒントを得た。
 日本人の住まいなら切られてしまい兼ねない大樹が
 良いアクセントになっている。塀の類いはない。


こんなふうにして風前の灯だった米軍ハウスは蘇生した。
しかも不特定多数の憩いの場として生まれ変わったことに
スタッフ一同、まずは満足している。

聴くところによれば、壊したがっていたハウスの
オーナーもこの再生をかなり喜んでくれているとか。

ちょっとの勇気と努力と心意気で
すべてがハッピーに転んだという好例となった。
何よりそれが一番喜ばしいことだ。

『 FLAT HOUSE cafe 』
http://www.flat-house-cafe.com/


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尚、イラストレータチームのショップは未だ準備中です。
開店の際にはブログやmixi、Twitterでご報告致します〜

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2011.03.10

16号で逢いましょう


先日、わが誌にも寄稿してくれているインテリア制作ユニット
「antos」のひとり、水田氏のお宅に所用でお邪魔したところ、
「実はもう一棟ハウスを借りました」
というギターを弾きながら歌が降りて来そうな突然の告白が。

ハウスとはもちろん食品メーカーではなく「米軍ハウス」のこと。
平屋フリーク=FLAT HOUSERたるや、二棟、いや三棟は
借りていなきゃといったステイタスがあるが(ホンマかいな)
これはワレワレの中では「新築買った」よりもスゴいことだ。


「ドドドドコドコドコどこに!?」


「ハウス」「もう一棟」と言うワーズが同列しただけで
すっかり取り乱してしまう我ら平屋男子 ←やだなコレ
しかも水田氏、ちょっと照れ気味に言うから
更にこちらの体温は上昇する。これはフリークが
「いい物件」に当たった時の喋りクチだ。

間取りはリビング+3ベッドルーム。
そこはほぼ一般的な米軍ハウスだが、
庭がとにかく広くクルマが6〜7台は
停められるのだという。

「うーん…そんな物件あったかなァ。どこだろう??」
場所の見当はついたが物件の確証が得られないまま
すぐさまクルマを飛ばして見に行くことに。
(このフットワークの軽さこそワレワレの武器)

それぞれの自車で向かったのでこちらが水田氏を追走、
走っているウチに嫌な予感が過った。
「まさか、あのハウスではあるまいな??」
いやいやそんなわきゃない、あそこは
めったに空いたりしないはずだ。  

しかしクルマはどんどん「そのハウス」の
建つ方面に向かって角を曲がって行く。
そして「そのハウス」横に来ると水田氏はクルマを着けた。
嫌な予感は的中した。

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「え”〜〜〜〜〜〜ッ!!こ、こ、ここ空いたのッ!?」

そこはもう7年も前から狙っていた
二棟のハウスのうちの一棟だった。
片方はほんの瞬間空いたが、翌日来た時は借り手がついていた。
(私のtwitterをご存知の方はTOPの写真がそれです)
そして水田氏のハウス共に庭がこれでもかというほど広く、
そこだけ「大草原の小さなお家」観を作り出している
ハウスの正しき在り方のような物件だ。


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「ええ、偶然通りかかったらご老人が草むしりをしていて
話しかけたらオーナーで。で、貸してもらえる事に
なったんですよ」

偶然?いや偶然なんかではない。
さりげなさを装っているが本当は彼は
時間が許す限り常に界隈のハウスを巡回しているのだ。
彼が人一倍努力していることを私はよく知っている。


ここで教訓。

    「汝、時間が許す限り徘徊せよ」


書を捨て町へ出よ、とはそういう意味でもあったのか。
寺山修司もFLAT HOUSERだったとは。


しかも家賃は都心のワンルーム並み…
がっくり膝を落としたが、この驚きは更に
→深い驚愕→やり切れなさ→嫉妬へと移行することになる。

「でも一番ラッキーだったのは
 敷礼ナシ、更新料もない事ですね」

…神様っているんだ。
そう思える瞬間だった。

「それから改修を全て自分でやることを条件に
 家賃は2ヶ月待ってもらってます」

彼が外務省に居たならば、今頃
拉致被害者は全員帰国しているに違いない。

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この続きは必ずや本に書きますので。


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さて。

そんなワタクシ平屋フリーク絵描きが
今度の日曜日(13日)福生は国道16号線沿いの
インテリアショップ『DECO DEMODE』に一瞬在店します。

正午から14時まで店内をウロウロしていますので
話しかけてください。モチロンご本をお持ちとあらば
名前なんぞも書かせて頂きますので〜

当日はショップ隣の公園で恒例のフリーマーケットも
やっている模様、家具も平屋に合うものが多い
当店ですので、散歩がてらにお立ち寄りください。


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2011.01.31

FLAT HOUSEの救済方法(1)

+

年初から3月まではFLAT HOUSERにとって試練の時節。
朝起きてキッチンのファンヒーターを点けると
室温のLED表示値は「4℃」、仕事部屋のは「LO」を表す。
おそらくこれが彼らの検温値のミニマムなのだろうが、夏の
冷蔵庫内が大体6℃前後だからそれより低いということになる。

ストレージにある洗濯機ホースは水抜きしておかないと
深夜には凍るし、台所のオイル類もキレイに固化する。
両者ともに布か何かを巻いておいてやらないといけない。

しかし、冬将軍が長逗留してゆくこの厳寒期を耐え抜くと
「強い体力」がもらえる仕組みになっている平屋ライフ、
風邪をひく回数が目に見えて激減するからフシギ。
それから「春到来の過度なヨロコビ」もついて来ます。

なんて言っているウチにもう2月ですが、
あけきってしまいましておめでとうございます。
本年もお手ヤワラカにひとつ。


++++++++++++++++++++++++++++++++++


「ウチの近所のハウス、借りてください!!」


ヤブから棒な電話があったのは昨年の拙著展終了直後、
5月の終わりごろ。声の主は『F.H.LIFE』の取材協力を
してくれた真鍋さんの奥さんだった。

まったりとした口調でお話になるジツに温厚な性格の
女性なので、めったに声を荒げたりすることのない
彼女なのに、この日の電話はいささかコーフン気味。

聞けば20年以上も借りられ続けていたある一棟の
米軍ハウスが急に空き家となり、入居者を募っているという。
何でもこの物件は彼女が幼少時代から知っている一軒で、
いつか住みたい…!と当時から
憧憬の念を持って眺めていた曰く付きハウスだそう。


そんな物件が空っぽの状態で「お待たせ。どうぞ」といって
微笑んで建っているのだから、興奮するのも無理はないこと。
借り手がつかなければ取り壊すとオーナーが
言っているらしいので何とかして欲しい〜と言う。

では近々見に行きますよと、とりあえず電話を切った。
うーん…困ったぞ。ここにも越してきたばかりだし
いくらなんでももう一棟借りるような余裕はない。

とはいえこのまま見過ごすワケにも行かず、何かせねばと
心当たりの友人知人に打診はしたものの、
入居タイミング上の問題や、ロケーション的不都合などで
全員NGの回答だった。

そこで思いついたのが、「ここで何かやりたい」という人を集めて
何かをする、といういう、まあ最近ハヤッてはいるが
シェア‘フラット’ハウスという使用法だ。
お金がないならばそこで家賃を作り出すことをやれば良いわけで
更に大勢でやればリスクも少なかろう。人集めなら自信もある。 


=============



翌日、友人とクルマを走らせハウス視察に向かう。
物件のある大和市方面にはしばしば行っていたが、
我が家からだとどうしても片側一斜線の街道を
使わないと行かれない。結構な時間を要する
ことはある程度覚悟していたものの、やはり遠い〜。

概ねの位置は解していたが、実際到着してみると駅からの
近さにびっくり。「FLAT HOUSEは駅からは遠い」というのが
定説化しているが、最寄りの私鉄線駅から徒歩6~7分だという。
これは「何か」ができるぞ、と直感した。


■いざ内覧へ。予め聞いていたとおり、かなりのヤレ具合。
壁には前住人の生活塵による家具類の影「汚れのシャドウ」が残る。掃除を怠っていた輝かしき証だ。

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■天井には雨漏り跡、壁もささくれ放題。腐った根太であちこちがフカフカする。この床の感触は古いハウスの悲しきお約束。

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■キッチンもかなりのシャビー加減。錆びないはずのステンレスシンクには腐食が。キャビネットの合板にはヒビが入ってめくれ返っている。



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この状態を新築物件やマンションに住み慣れた人たちが見たら、とてもじゃないが住もうとは思わないだろう。


しかしリビング+3ベッドルームの広さ、廊下もあるしバルコニーも庭も付いている。カーポートは2
台収容可能なスペースを有している。


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総合判定は「満点に近いハイ・ポテンシャル物件」と結論。家賃も10万を切っての安価だし、何より住み手に手を入れる余地をたくさん残しているこういう物件こそ優良物件なのである。想像力を掻き立ててくれるジツに良い平屋だ。

帰宅後早速ここで何かしてもらいたいという人々に声をかけることにした。後日、細山田デザイン事務所の細山田氏、イラストレーター仲間の青山京子さん、maonのギタリスト&シンクロデザインの岡 優太郎氏らがお忙しいところ集まってくれた。


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かくして、このハウスはワレワレに借りられることになるのだった。
さあて、このハウスがどんなふうに変身するのか、おたのしみに。


つづく


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2010.10.29

後悔、先に建たずぜよ

今月は前半に冷房を、後半には暖房を入れた。
なんじゃこりゃ。
このマコトにおかしき10月ももう終わってしまうが
二ヵ月後に晦日が来るとはどうも思えない。
夏がついさっきまで隣に居たというのに。

というワケで、前々回で最後に話した
「堅牢な家をわざわざ…」というおハナシを。

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少し前の話になるが、梅雨明け間近に
友人と自転車でポタリングをした。
その際、近所にある古い外人向け住宅を見に寄った。
二階建てが1棟、それを挟むように平屋が2棟、
計3棟の木造住宅が並んで建っている。

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築年数はパーツなどから見ておそらくどれも40~50年と
いったところだろうか、全棟造りが違っていてジツにそそられる。
潤沢な緑を湛え、周囲の建売り住宅とは出している空気が全く違う。

昨年この並びの存在を知ったとき、一番東側の平屋が空き家に
なっていたので内部を外から覗いたところ和室や玄関があったりと
我が家のような米軍ハウスとはまたひと味違うことが分かったが、
賃貸対象はやはり在日西洋人のようだった。
その後どんな人が入居したのか気になっていたのだが
イヤな予感が的中…。

緑がはぎ取られてむき出しになった地面の上で
パワーショベルが轟音を立てながらくるくる回り
廃材を砕いている風景に直面。愕然とした。
「ああああ~~~壊されている…」

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産廃と化した家屋を満載したトラックの下でロープを扱いていたオヤジさんに話しかけると、笑顔で「次はこっちも壊すんだよ」と隣を指差した。


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「ナニ~~〜ッッ!こっちもか!?」
よく見ると真ん中の二階家も
いつの間にか空き家になっているではないか。
心臓がバクバクし
アタマに血が上って来た。

昨年来たときは、東側の空き平屋の写真を撮っていた僕に
出かけかけていたクルマをわざわざバックさせて
「なぜ写真なんか撮ってるの?」と猜疑心ムキ出しで訊いて来た
よーく肥えたアメリカ人おかあちゃん一家が住んでいたのに。


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ふーっと急襲されたのは倦怠感と寂寥感。しかし、こういうシチュエーションにももう慣れた。ここでぐったりしていても仕方なし、ならば少しでもこの家を残さねばという気持ちが湧き上がり建具などのパーツをサルベージしようという考えにアタマがスイッチ。こっちも成長した。

パワーショベルの運転席で休憩中の若い親方に尋ねると「どうぞ好きなだけ持ってって」という返答が。そりゃあ処理費用が減るわけだから解体業者としてもありがたいだろう。


ただし明後日から壊し始めるからそれまでにという。
我が家のドアを付け替えてくれたK君にもその場で
電話し急遽助っ人として参戦してもらうことにした。

そして翌日、とにもかくにも我々は解体屋への手土産の
ビールを携え昼前から家の中に入り物色を始めたのだが
…踏み入るなり再び絶句。


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な、なんてイイ家なんだろう!!想像以上だった。
今こんな家を建てようとすれば相当な額がかかるだろう。
いや、もう建てられないに違いない。

ああ、これがすべてゴミになるのか…
そう、いつもそうだ。この順序で同様のことを想うのだ。
なぜこんなにいいモノを壊してチャチな新築を建てる??
ナゼこの愚行を誰も止めようとしない??
最後は必ずこの虚しい自問で終わる。
答えは解っている。
でも解ったって仕方のない答えなんだ。

やりきれなさと怒りに近い悲しみの中
僕らは建具を黙々と外して廻った。

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20枚ほどのドアと窓ガラスが
我が家のストレージにねじ込まれた。
達成感などなかった。あるのは敗北感だった。


こういう建物がただ築年数の数字の多さだけで
「価値0円」と判断されるのであれば
近い将来日本から昭和のモダン建築は
完全に消え去るだろう。


後聞の話だがM社の仕業らしい。
いいか、目先のカネのために
バリバリ破壊し拙速な小屋ばかり建て、
数十年経って安普請の薄汚れた
ペンシル住宅ばかりになってから
ああ、昔の街並は良かった~なんて
嘆いても遅いのだぞ。
あわてて「あの素晴らしい街並を再現」
なんつってニセモノタウンをこさえても
遅いのだぞ。

早いところみんながこの宝物に正当な価値を
付けることを促さねば~という気持ちが
また胸の中にこぶしを強く握らせ
ある仕事の実行への導火線に火をつけた。

その青写真のお話はまた次回に。


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あこれもこれもそこもここも…みんな壊され今はもうない。
写真の中にあるだけだ。
この家の詳しいことはいずれ本で語ることにしようと思う。



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2010.07.13

水無月はちょっと力尽き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は今日いったい何をしたんだろう・・・」

と湯船の中で呟く夜がある。

 

忘れていた請求書を送った、
仕事部屋の片付けをした、
途中までだったメールの返事を書き上げた、
録り溜めていたドキュメンタリー番組を観た、
あとは‥‥?

 

あまりの「野暮用日」加減に慙愧にも似た後悔の念が
入浴中に襲って来るワケなんですね。ブクブクブク・・・

 

6月はまさにそんな日の連続でした。もちろんご依頼頂いていた仕事はキッチリこなしたが、拙著展と自費出版誌の発売が重なった4~5月があまりにも高エネルギーを要した期間だったためココロとカラダのフュールメーターがすっかりエンプティを指してしまっていた様子。「調整」と言いますか、心身と生活のグルーミングをしたような月でありました。ニンゲン誰しも使えるエネルギー量は決まっているのかも知れないですなあ。

 

 

 

と、ブログ更新遅延の言い訳をしておいて、閑話休題。

 

とはいえぼちぼち進めていた『FLAT HOUSE style』の
販路開拓の画策が今月に入ってじわじわ反映、
都内の書店やインテリアショップなどに少しずつ置かれ始めております。

 

その中で、『FLAT HOUSE style』ブースを設えたショップが出現。今月から友人H氏が始めたビンテージキッチンウエアの店【GADGET MODE】がそこ。
ここで「おや?」と思った人は私のブログをよく読んでいる方。実はこの屋号は元々欧州車のオリジナルインテリアを売るために5年位前に彼が立ち上げたもの。それが紆余曲折、数年を経てこんなお店に変身した次第。場所は「小江戸」と形容される埼玉県川越市。川越は今や同県の中核都市で、ここ数年で随分にぎやかな街に変貌した様子。土日は原宿竹下通りのような賑わいになるのだとか。

 

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【GADGET MODE】は川越駅から伸びるクレアモール商店街を少し横道に入ったマンションの一室にある。聞けば同棟オーナーがビンテージウォッチの店をやっていて、そこをアンティークモールのようにすべく洋モノ古物商に低家賃でスペースを提供しているとのこと。残念ながら平屋ではないけれど、不況の煽りを受けて軒並みシュリンクしてる昨今の古物商売、それがこんなふうに元気に集結している姿を見るのは久しぶり、ジツに嬉しい。

 

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お近くにお住まいの方はここで『FLAT HOUSE style』及びグッズをお買い求めいただけます。あ、ついでにビンテージキッチンウエアも買ってあげてね。いやいや冗談ヌキで~他では入手しにくいようなめずらしい&カワイイものばかりですので。

 

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■木製シェルフは店主による手作り。多少のアラは見えども友情にあふれた会心の作(涙)書籍はモチロン、Tシャツやステッカー、カップ&ソーサーなども置いています。 

 

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■色とりどり、60年代以前の『タッパーウエア』は本当に発色がキレイ。店内が否応なしに可愛くなる(写真3・4枚目)什器類は家から持ち込んだもの以外は殆どセルフビルド。少ない資金で見事ここまでのお店にしたH氏、頑張ったなあ~。

 

■THERMOSのピクニックセットは英国1940年代製。レアですね(写真下から2枚目)

 

 

 

■ショップのロゴ&キャラクターは随分前にここでも紹介した。出世払いの約束で描いたので早いとこお店が軌道に乗ってくれないと困る~~皆さまのご来店をヨロシクお願い致します。

 

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