ジョーによろしく
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大学時代、学祭にデビュー前のブルーハーツを呼んだとき彼が観に来てくれていた。前座のような形で演った僕らの演奏も観ていたようで、ステージ後スゴく良かったと真剣な顔つきで話しかけて来てくれた。笑うとちょっとヒロトに似ているその男はイワタと名乗った。こちらは洋服の並木であつらえたエンジの玉虫スーツにLOAKのタッセルのルードボーイスタイル、イワタはキャスケットにレザージャケットを羽織りクリーパーシューズといったUKロッカーズスタイルだった。
「よかったら聴いて」とカセットテープを手渡された。スリーブにメンバーの紙焼き写真が入っていて「The STRUMMERS」と書いてあった。ザ・クラッシュのボーカリストの名前をそのままバンド名に据えるとは、随分とまあ大胆な名前をつけたもんだなと内心思ったが、本人がジツに爽やかな人柄でそれはむしろ純粋さと潔さの表れなんだろうと解釈した。
ギグ(ライブではなく)にも誘われ観演しに行ったこともあった。確か渋谷Lamamaだ。こちらは60Sモッドバンドやパブロックのカバーバンドだったのに対して彼らはすでにオリジナルを演っていた。当時の曲は初期パンクというより何か劇曲のように感じた。クラッシュを期待して行ったため正直あまりピンと来なかったが、今思えばあれこそが彼のオリジナリティ・独自性だったのだ。
その後よく連絡を取り合うようになり、三軒茶屋の彼の下宿によくスクーターで遊びに行った。そこで何時間も音楽やロックトライブ、それに関するファッションの話をした。彼のガールフレンドの話なんかもよく聴かされたっけ。
僕が就職してからは疎遠になってしまい、ライブはやっているようだくらいの認識しかなくなってしまっていたある日、TV番組のエンディングに彼らの曲が使われていたのを見て、お!デビューしたか!とちょっと嬉しくなった事を覚えている。以降、情報は得ていない。
ジツはつい先日荷物の整理をしてたらその時のカセットテープが出て来て、しばらく写真を眺めて懐かしんでいたところだった。メジャーデビューした後どこかで一度だけ会っていたかもしれないが、記憶が曖昧だ。奇遇にも「そうだ、イワタは元気でやっているのかな」と思っていた数日後の訃報。つくづく思い立ったらすぐ人には会っておくべきだと痛感した。岩田美夫のような男とはもう二度と出会えないだろう。
こんなふうに突如鬼籍入りしてしまった友人知人がここ3〜4年で何人もいる。今回も腑に落ちない気持ちでいっぱいだが、ヤツのことだからきっとジョーに屈託なく話しかけ楽しく話をしているんだろうなァと考えることにして、送りたい。
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