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2014.06.24

新作、書き終わりました

:


今月末に発刊される新作の入稿が先日完了した。


この本の創案はちょうど震災の年に遡る。
暑さ失せない晩夏のある日、体温の高いメールをくれ
ていた拙著ファンというG社の若い編集者Sさんが訪ね
て来た。我が社からも平屋関連の本を出しませんかと
いうご依頼だったが、FLAT HOUSE LIFE 続刊の取材が
始まったばかりだったため色好い返事ができなかった。

そこでこちらからこんな提案をした。
FLAT HOUSEの取材をしていると、遊ぶように暮らす
面白いライフスタイルの変わった人々に出会うことが
少なくない。似たような暮らし方をしている人たちが
平屋住人以外にも居たため、FLATHOUSEの枠をはず
して別のファイルにまとめたいと常々考えていた。
そんな感じの本はどうか、と。

すると大いに乗ってくれたため、数日かけて提案書を
書き上げた。それを持ってS氏は社内会議にかけたが、
結果はNG。確かにこれまでの拙著と比べ住宅よりも暮
らし方にフォーカスした内容だったので、少々難しか
ったのかもと思い主題の角度を若干住宅よりに戻して
リライトした。

しかし結果は同じだった。その後数ヶ月いろいろ手を
尽くしたが発刊に近づく事はなく、結局G社からの上
梓は叶わなかった。後日Sさんからは丁寧な謝罪メール
が来てこの話は秋と共に終わった。


Img_6198_1

ああ、FLAT HOUSE LIFEの時もこうだったな、と思い
出した。当時何社かに提案書を持ち込んだが、どこも
「誰が古い平屋の本なんて買うんだ??」という反応
だった。担当者からの伝え聞きだが、そう言ったのは
全員管理職=50代以上の男性社員、いわゆる「オジさ
ん」たちである。世の会社の会議で決定権を持つのは
ほぼこの年代のオジさんたちだ。


彼らは殆ど「暮らし」というものに興味がない。料理
は大抵できないし洗濯も掃除もしない。するといって
もそれは趣味でか仕方なしの気まぐれ程度で、生きる
ために日々やっているような人は少ない。そういうオ
ジさんたちはリアルな暮らしには無関心で、心のどこ
かでそれは女のする仕事だからと見下している感すら
ある。しかし、それは生きて行く上でもっとも大切な
仕事であり、それがあっての日々の生活なのだ。


我が家に来てもキッチンなどには立ち入らず、入って
来て「わあ〜」と上気するのは大抵女性。カトラリー
や器具をじっくり観察する男性はほぼいない。(もち
ろん例外の紳士諸氏もいます!)

尤もかくいうワタクシも年齢は立派なおじさんだが、
そういうナマの生活の部分にキチンと向き合っている
男性は、年齢が達していても決して「オジさん」では
ないと僕は提議付けしている。

であるからして、そんな「オジさん」たちには平屋は
単なる「貧乏長屋」「しもた屋」にしか映らないのだ。

*

彼らの引き出しにある古い家への解釈といえば、田舎
暮らし的古民家あたりがギリギリなのだろう。信州の
古い炉端付き農家の中身をすっかり和モダン調に刷新
し、高そうなオーディオセットをうやうやしく置きビ
バップジャズに身体を揺らすオジさんの姿をTVで観た
事がある。

それでも新築マンションなどよりはずっと良いとは思
うが、そのくらい判り易い濃い目の味付けにしてやら
ないと食いつかない。そういうのが、かの世代の男性
大半の解釈限界のような気がする。

考えてみれば都心マンションに好んで住み、それを所
有することこそが人生のステイタスと信じ切っている
ような一元価値感のサラリーマンオジさん編集者に、
戦後建った古い平屋の味わいへの理解を求めることが
土台ムリだったのかも知れない。

そういう解釈範囲の人々があらゆる組織の決定権ある
席にことごとく陣取っているのだから、シックぶった
樹脂製サイディングの新築住宅やツリ目のテカテカし
た自動車に囲まれるはずである。


(つづく)

*


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