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June 2014

2014.06.27

そして梅雨まっ只中、本日発売

(前回のつづき)


フタを開けてみれば断られ続けた「しもた屋」本は13回の版を重ね2冊目を出すまでに至った。が、そんなことはG社のオジさん達には関係のないことだった。ウチから出した本の実績こそがすべてということだったらしい。もう気持ちの切り替えに注力することにした。

拙著スタッフの大杉氏から、フットサルで会う人に拙著ファンがいると以前からたびたび聴かされていた。そのYさん(彼もSさんなので名前のイニシャルの方で)は出版社勤めで渋谷のロゴスギャラリーでの拙著展にも来てくれていたそう。彼にその企画を振ってみましょうかということになり、一度ご来訪いただく運びとなった。

受け答えはしっかりするものの、もの静かで口数の少ないYさんは、前回のG社Sさんほど発熱量は高くなかったが実直な印象の御仁だった。本の内容を話してみたところ好感触。その数日後の社内会議で企画はあっさり通過、拍子抜けしてしまうほどの速度で発刊は決まった。出版社によってこんなに違うものかと毎度驚かされる。一昨年末のことであった。


翌年5月から取材を開始し半年かけて終了。年明けから執筆に入って今月脱稿したという経緯だ。そして創案から実に3年の歳月が経った今日27日その本が店頭に並ぶ。


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[取材初日ノルブリンカにて]

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タイトルは『HOME SHOP style』とした。自宅の一部を改装し「店舗兼住居」として暮らす人々とその家を紹介した一冊。概ねは賃貸の平屋だが二階建て以上の物件もありマイホームのケースもある。共通するのは家と店を兼ねていることと、汗水垂らして好きな仕事を楽しくする住人の姿。また「大樹の陰には寄らない」という姿勢も共通する。とにかく既成概念に囚われず、我が道を行く12世帯が一誌上に会した体だ。


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この本を書くにあたって、昨今の行き過ぎた仮想経済依存へのアンチテーゼが少なからず作用した。巷にはにわかに景気復調の兆しありというような空気が流れ、雇用もウナギ上りだと報道番組なんかではやっているけれど、どこまでのっかっていいものやら甚だ疑わしい。

ちょっとした風向きの変化であっさりと状況が変わるのが昨今。実態経済を出し抜き仮想経済の方が景気のイニシアティブを握る現代では、極短期間で状況が豹変しその影響は津波のごとく私たちの暮らしに襲いかかる。


そんな風景を幾度となく見せられて来た者としては、この状況にハイそうですかそいつはよかったですねとは言い難い。まさしくバブル景気崩壊後がそうだったように、またいつどんな急転直下ならぬ急転悪化にさらされるか分かったものではない。

しかもよくよく見れば現在人手不足と騒いでいるのはサービス業や工場、介護といったルーティンワークや肉体労働の現場であり、決して大企業の事務職といった職種ではない。その部分の人員は構造不況といわれていた20年前からだって足りていなかったのではなかったか。


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今回の本は、奇しくもそういう「資本家の気まぐれによる大津波」から身を隔つことを本能的にやっている人たちの好例集のような一冊になった。FLAT HOUSEシリーズでは暗喩的に都下型オルタナティブライフを提案するものだったが、今作はもっとダイレクトに推奨する内容だ。

先のリーマンショックの時には、大手企業の仕事を多く請け負っていた友人デザイナーがコンビニでバイトを始めたという光景も見た。これは決して他人事ではなく、このまま請負い型の仕事ばかりを続けていればいつ自分の身に降り掛かって来くるやも知れぬ出来事として覚悟しなくてはいけないと当時強く肝に銘じた記憶がある。

そのあたりのことは本書のまえがきに託すことにするが、公私共にいろいろなことがあったこの2年の間、とにもかくにも早くこの本を出さねばと一心に取り組んで来た渾身の一冊、なにとぞご高覧を。

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2014.06.24

新作、書き終わりました

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今月末に発刊される新作の入稿が先日完了した。


この本の創案はちょうど震災の年に遡る。
暑さ失せない晩夏のある日、体温の高いメールをくれていた拙著ファンというG社の若い編集者Sさんが訪ねて来た。我が社からも平屋関連の本を出しませんかというご依頼だったが、FLAT HOUSE LIFE 続刊の取材が始まったばかりだったため色好い返事ができなかった。

そこでこちらからこんな提案をした。FLAT HOUSEの取材をしていると、遊ぶように暮らす面白いライフスタイルの変わった人々に出会うことが少なくない。似たような暮らし方をしている人たちが平屋住人以外にも居たため、FLATHOUSEの枠をはずして別のファイルにまとめたいと常々考えていた。そんな感じの本はどうか、と。

すると大いに乗ってくれたため、数日かけて提案書を書き上げた。それを持ってS氏は社内会議にかけたが、結果はNG。確かにこれまでの拙著と比べ住宅よりも暮らし方にフォーカスした内容だったので、少々難しかったのかもと思い主題の角度を若干住宅よりに戻してリライトした。

しかし結果は同じだった。その後数ヶ月いろいろ手を尽くしたが発刊に近づく事はなく、結局G社からの上梓は叶わなかった。後日Sさんからは丁寧な謝罪メールが来てこの話は秋と共に終わった。


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ああ、FLAT HOUSE LIFEの時もこうだったな、と思い出した。当時何社かに提案書を持ち込んだが、どこも「誰が古い平屋の本なんて買うんだ??」という反応だった。担当者からの伝え聞きだが、そう言ったのは全員管理職=50代以上の男性社員、いわゆる「オジさん」たちである。世の会社の会議で決定権を持つのはほぼこの年代のオジさんたちだ。


彼らは殆ど「暮らし」というものに興味がない。料理は大抵できないし洗濯も掃除もしない。するといってもそれは趣味でか仕方なしの気まぐれ程度で、生きるために日々やっているような人は少ない。そういうオジさんたちはリアルな暮らしには無関心で、心のどこかでそれは女のする仕事だからと見下している感すらある。しかし、それは生きて行く上でもっとも大切な仕事であり、それがあっての日々の生活なのだ。


我が家に来てもキッチンなどには立ち入らず、入って来て「わあ〜」と上気するのは大抵女性。カトラリーや器具をじっくり観察する男性はほぼいない。(もちろん例外の紳士諸氏もいます!)
尤もかくいうワタクシも年齢は立派なおじさんだが、そういうナマの生活の部分にキチンと向き合っている男性は、年齢が達していても決して「オジさん」ではないと提議付けている。であるからして、そんな「オジさん」たちには平屋はなる「貧乏長屋」「しもた屋」にしか映らないのだ。

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彼らの引き出しにある古い家への解釈といえば、田舎暮らし的古民家あたりがギリギリなのだろう。信州の古い炉端付き農家の中身をすっかり和モダン調に刷新し、高そうなオーディオセットをうやうやしく置きビバップジャズに身体を揺らすオジさんの姿をTVで観たことがある。

それでも新築マンションなどよりはずっと良いとは思うが、そのくらい判り易い濃い目の味付けにしてやらないと食いつかない。そういうのが、かの世代の男性大半の解釈限界のような気がする。

考えてみれば都心マンションに好んで住み、それを所有することこそが人生のステイタスと信じ切っているような一元価値感のサラリーマンオジさん編集者に、戦後建った古い平屋の味わいへの理解を求めることが土台ムリだったのかも知れない。そういう解釈範囲の人々があらゆる組織の決定権ある席にことごとく陣取っているのだから、シックぶった樹脂製サイディングの新築住宅やツリ目のテカテカした自動車に囲まれるはずである。


(つづく)

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