続・ミトコンドリアを増やせ
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昨夏「ミトコンドリアを増やせ」というタイトルの一文を書いたらば今年また友人からの依頼が増えた。依頼主からダイレクトに話を聴き、描き、手渡し、直に笑顔を拝めるという『対面販売』に、僕のような仕事はジツに向いているということが改めて判った。そうか、元々絵描きとはそういう職業だったはずだ。そんなことも再認識。今回もその例をいくつか。
昨年から友人Tくんらと共同で借り始めた土地に、プレハブの倉庫を建てた際に大変お世話になった知人の名刺。簡易建築とはいえ、ハイ建てなさいといわれた素人がホイ来たと一朝一夕にできるものでもない。ブロックを並べるだけの基礎であっても結構難しい。人工(にんく)だけでなくある程度知識を持った人が必要で、家具職人+大工である彼の手がなければあんなに短時間で建てることはできなかった。
そんなSさんは、腕がいい御仁なのに気の毒にも不幸が続き、当時生活保護を受けていたという。しかしTくんが仕事を取って来たり軽トラを無償で譲ったりして、見事昨年末生活保護解除が叶った。そのときの御礼と社会復帰祝いにと作ったもの。「どんなことができるか」を裏面にイラスト化、氏の人柄のような柔らかな色調で仕上げた。
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依頼主の渡邊ノリトくんとの出会いは、狭山のジョンソンカフェでのトークイベント。拙著FLAT HOUSE styleに掲載されている設計士の友人の広告を見てご連絡をくれた経緯。『丹誠塾』という名のちょっと変わった塾の先生ということで、話もジツに面白くちょくちょく会っているうちに大学の後輩にもあたるということも判明し、付き合いが深まった。自身もなかなか変わっていて、学生当時始めた当塾講師のアルバイトがあまりに楽しく、遂には大学を中退して先生になってしまったという笑い話のような経歴の持ち主なのである。
丹誠塾は、企業兵隊養成所のような巷の学習塾とはまったく主旨を異にし、受験勉強にウエイトを置かない。不要になった紙を使って橋を作らせ強度を競わせたり、牛乳パックでパンを焼かせたり、課外授業で寄席に行ったり、ただただ火を興したりといった授業内容はニンゲン育成塾の趣(それでも東大生も輩出している)。
その彼が初代塾長の引退に伴い塾を継承する運びとなり、物件選びからヴィジュアルの一新までをお手伝いすることになった。塾の主旨がぱっと判るよう見合い写真的な目を惹くカードをまず作ろうと提案し、こんなカンジのものが出来上がった。そして「たんちゃん」なるキャラクターを自立させ、看板を手描き。一昨年描いた阿佐ヶ谷の友人店舗『Sugar Moon』からこれが2枚目だが、とても楽しんでできた。
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前回ボロボロカバーの拙著エピソードで登場してもらった福岡の内装職人のU氏、彼から受け取った名刺のフォントがあまりに名刺として相応しくなかったため、リニューアル。同業者である前出のSさんよりも仕事内容のアナウンスを控え、その分ストーリーを持たせた。彼の独特なキャラクターと人間味溢れる仕事っぷりがよく反映できたと自画自賛の一枚。
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最後は商用以外の仕事を。
僕は日頃似顔絵を頼まれても描かない。似顔絵は線だけ似せてもダメ。その人の中身をよく知らないといいモノに仕上がらない。なのでごく親しい友人のものしか請けない。描くときにも写真などは一切見ない。印象だけで描く。
春先に親友チャーリー森田さんの奥さんから「旦那の50回目の誕生日に絵を描いて欲しい」という依頼を請けた。彼とは20年来の友であり、先輩でもあるためもちろん快諾。居酒屋の店員よろしく「ハイ喜んで!」と承った次第。
お題はどんなテーマでも良いから家族全員を描いて欲しいというもの。30年間もドラマーとして音楽活動をして来た彼なので、そのあたりは絡めようとは思ったけれど太鼓に座る姿を描くのは今回はやめた。代わりに彼のごく親しい人にしか見せない普段の人間性が見えるものにした。バースデーの夜、梱包を解いた瞬間に居合わせたが、ここでもまた今まで一度も見たことのないような笑顔を真向かいで拝め、幸せお裾分けいただきました。
来年もまたミトコンドリアの育成にひと役買いたいものです。
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Comments
今回の記事すごく私にとっては良かったです。小さな子どもがいるので丹誠塾は凄く興味を持ちました。でも入間だからちよっと遠いかな?
Posted by: rkmk | 2014.05.08 07:17 AM