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December 2013

2013.12.21

続・ミトコンドリアを増やせ

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昨夏「ミトコンドリアを増やせ」というタイトルの一文を書いたらば今年また友人からの依頼が増えた。依頼主からダイレクトに話を聴き、描き、手渡し、直に笑顔を拝めるという『対面販売』に、僕のような仕事はジツに向いているということが改めて判った。そうか、元々絵描きとはそういう職業だったはずだ。そんなことも再認識。今回もその例をいくつか。

昨年から友人Tくんらと共同で借り始めた土地に、プレハブの倉庫を建てた際に大変お世話になった知人の名刺。簡易建築とはいえ、ハイ建てなさいといわれた素人がホイ来たと一朝一夕にできるものでもない。ブロックを並べるだけの基礎であっても結構難しい。人工(にんく)だけでなくある程度知識を持った人が必要で、家具職人+大工である彼の手がなければあんなに短時間で建てることはできなかった。

そんなSさんは、腕がいい御仁なのに気の毒にも不幸が続き、当時生活保護を受けていたという。しかしTくんが仕事を取って来たり軽トラを無償で譲ったりして、見事昨年末生活保護解除が叶った。そのときの御礼と社会復帰祝いにと作ったもの。「どんなことができるか」を裏面にイラスト化、氏の人柄のような柔らかな色調で仕上げた。


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依頼主の渡邊ノリトくんとの出会いは、狭山のジョンソンカフェでのトークイベント。拙著FLAT HOUSE styleに掲載されている設計士の友人の広告を見てご連絡をくれた経緯。『丹誠塾』という名のちょっと変わった塾の先生ということで、話もジツに面白くちょくちょく会っているうちに大学の後輩にもあたるということも判明し、付き合いが深まった。自身もなかなか変わっていて、学生当時始めた当塾講師のアルバイトがあまりに楽しく、遂には大学を中退して先生になってしまったという笑い話のような経歴の持ち主なのである。


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丹誠塾は、企業兵隊養成所のような巷の学習塾とはまったく主旨を異にし、受験勉強にウエイトを置かない。不要になった紙を使って橋を作らせ強度を競わせたり、牛乳パックでパンを焼かせたり、課外授業で寄席に行ったり、ただただ火を興したりといった授業内容はニンゲン育成塾の趣(それでも東大生も輩出している)。

その彼が初代塾長の引退に伴い塾を継承する運びとなり、物件選びからヴィジュアルの一新までをお手伝いすることになった。塾の主旨がぱっと判るよう見合い写真的な目を惹くカードをまず作ろうと提案し、こんなカンジのものが出来上がった。そして「たんちゃん」なるキャラクターを自立させ、看板を手描き。一昨年描いた阿佐ヶ谷の友人店舗『Sugar Moon』からこれが2枚目だが、とても楽しんでできた。


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前回ボロボロカバーの拙著エピソードで登場してもらった福岡の内装職人のU氏、彼から受け取った名刺のフォントがあまりに名刺として相応しくなかったため、リニューアル。同業者である前出のSさんよりも仕事内容のアナウンスを控え、その分ストーリーを持たせた。彼の独特なキャラクターと人間味溢れる仕事っぷりがよく反映できたと自画自賛の一枚。

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最後は商用以外の仕事を。
僕は日頃似顔絵を頼まれても描かない。似顔絵は線だけ似せてもダメ。その人の中身をよく知らないといいモノに仕上がらない。なのでごく親しい友人のものしか請けない。描くときにも写真などは一切見ない。印象だけで描く。

春先に親友チャーリー森田さんの奥さんから「旦那の50回目の誕生日に絵を描いて欲しい」という依頼を請けた。彼とは20年来の友であり、先輩でもあるためもちろん快諾。居酒屋の店員よろしく「ハイ喜んで!」と承った次第。

お題はどんなテーマでも良いから家族全員を描いて欲しいというもの。30年間もドラマーとして音楽活動をして来た彼なので、そのあたりは絡めようとは思ったけれど太鼓に座る姿を描くのは今回はやめた。代わりに彼のごく親しい人にしか見せない普段の人間性が見えるものにした。バースデーの夜、梱包を解いた瞬間に居合わせたが、ここでもまた今まで一度も見たことのないような笑顔を真向かいで拝め、幸せお裾分けいただきました。


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来年もまたミトコンドリアの育成にひと役買いたいものです。


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2013.12.03

静かにお詫び、お知らせ、&喜び

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既にお気づきの方もいらっしゃるかとは思いますが、現在『FLAT HOUSE LIFE』『FLAT HOUSE LIFE vol.2』の販売が停まってしまっています。当書は、発行元(マーブルトロン)と販売元(中央公論新社)が違っており、前者が後者の販売口座を借りて商品を流通させていましたが、それが今夏両社の契約切れ更新なしという、通常では起こりにくい事態に陥ったというのです。正式に連絡があったわけではなく関係者からの伝え聴きですが、書籍自体はまだ出版社に存在するものの流通は不全という、ジツに不可解な状況にあるようなのです。

 

 

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こんな話をしてイイものか迷うが、著者印税はここ1年未払い(注1)。今春の終わりあたりから昨年交代した新代表はおろか経理社員でさえ電話がつながらない(というか出てくれない)状態となり、社の存続状況すら不明。当社刊のほとんどが買えない状況にあるということだけは明確なため、どうにか販売だけでも復旧させられないか関係者やほかの著者らと連携しながら画策している最中です。書店に行ったが取り寄せもできないという苦情を少なからずいただいておりますが、近日中には某かの結論が得られると思いますので、詳細がはっきりし次第またご報告致します。皆さまにはご迷惑をおかけして大変申しわけありませんが今しばらくお待ちください。

 

 

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そしてもうひとつ、いったいどーなった!?とあちこちで訊かれる『FLAT HOUSE style』の件。こちらもごシンパイをおかけしております。戦後ヤミで出回った3合も呑めばツブれる粗悪酒=カストリ酒から皮肉った「カストリ雑誌」の呼び名よろしく、3号でツブれるという様相は正に我が誌の現在。そうならないようにとフン張っては来たものの、なに分自費出版。印刷するたびに大金を準備しなくてはならない上、我が国の書店はほとんどが「委託販売」であり、料金回収は2ヶ月以上先になります。その間のやりくりがこれまたまことにしんどい。

 

そしてもうひとつは「流通」の難しさ。倉庫から事務所までの本の運搬は2名で、発送や管理はほぼひとりで行っているため、出版した後も時間やエネルギーをそちらに持って行かれてしまいます。もちろんそうしたことは当初からの想定内ではありましたが、始めるは易し継続は難しといったところ。各号すべて買い取りにしてもらえたならばそういう問題も大幅に解消されるのですが、委託は月末に計算書のやり取りをたくさんの書店としなくてはならず、これを本業と両立させるのがまた至難の業。

 

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しかし3巻の発行を終え創刊から3年が経った現在、随分と問題点や改善点を洗い出せ発見は多々。また、創刊号と2号はおかげさまで完売することができました(3号は一部書店で現在も取扱中)。2巻の増刷も検討しておりますが、次号分の取材は完了しているので資金調達および流通の確立を急いでなるべく早く再出発したいと考えています。

 

 

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というようなジツに気分のすぐれない状態のまま九州転居を敢行した今夏、福岡で知り合った内装大工のU氏から驚くものを見せられた。氏ご所有の拙著数冊なのだが、これがまた読み古され加減がスゴいのである。すり切れたカバーにアタマから飛び出すたくさんの付箋。聴けばバイブルのように繰り返し読んでくれているということで、自宅では元より現場、はたまた運転中も赤信号で停まるたびにページを開いているという(ちょっと危ない)。こんなふうになるまで読み返してもらえる本が果たして世の中に何冊あるだろうか。変わり果てた我が分身を見てくすんでいた気持ちが随分と上向きとなり、図らずも本を書いて良かったと再び静かに喜べる時間を九州でもいただいた。拙著をお持ちいただいている読者のみなさんに改めて厚く御礼を申し上げたい。

 

 

 

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最後に、もうひとつお知らせを。現在竹書房から上梓する新刊の執筆に入っている。発刊は2〜3月あたりの予定。FLAT HOUSEシリーズとはまた切り口の違った趣きの書に乞うご期待!

 

 

 

 

(注1)
のちに元代表のK氏から連絡が入り、印税の半分が支払われた。

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