冬の咳ばらい
*
雪の降る街を
雪の降る街を
思い出だけが通り過ぎてゆく
雪の降る街を
遠い国から落ちて来る
この想い出をこの想い出を
いつの日かつつまん
温かき幸せのほほえみ
極寒キッチンで食事の支度をしていたら
ラジオから手嶌葵の歌う『雪の降る街を』が流れて来た。
にしてもなんて寒さが匂って来る歌なんだろう。
重たいイントロから後半メジャーに転調はするものの
徹頭徹尾くらーい曲。刹那に鬱になりそうだ。
この曲が書かれた当時は
今よりももっと冬が寒かっただろうし
街も道路もうす暗かったのだろう。
だからこんなトーンの歌が生まれた。
そういう事情もこの曲からは何となく伺い知れる。
歌とは少なからず人のココロをえぐるべきだ。
今はこんな曲を書ける人はいない。
こんな曲を書かされてしまうような場所は都市にはないから
心象風景を歌詞に反射させて匂いや温度まで感じさせて
くれるようなマチエールの深い「歌」は生まれない。
*
低温ならば当時の環境にも負けないほどの寒さの
我がハウスだが、雪が降るとこんな表情を見せる。
「寒い家はイヤ」の意見には異論はないけれど
雰囲気も情緒もない家はもっとイヤ。
今のプロダクトは家に限らずどれも
利便性やコストのことばかりで
人の感情に訴求するものを持っていない。
組み立て家具や100円雑貨やファストファッションは
確かに用途によってはそれで賄えるものもあろう。
が、囲まれて暮らすようなものじゃない。
「安かった」とニコニコしていれば
その人もそれなりの「程度」になってゆく。
そういうことも知っておいた方がいい。
昨日、春まであと少しですと天気予報。
冬の長逗留にヘキエキするような毎日だが
ここで迎える3回目の冬、この寒さにはもうすっかり慣れた。
昔は大嫌いだった冬が、最近は行ってしまうことにも
ちょっとだけ寂しさを憶えるようになったのは
平屋に住むようになったことと無縁ではないような気がしている。
*
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