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2011.11.30

もし木の家に住みたくなったら…どうぞ 

ここ最近なにかと建築に関する仕事から
お呼びがかかるようになった。

これまでもちょくちょく描かせてもらっていたエクスナレッジ社は建築に携わる人なら誰もが知っている『建築知識』という刊行誌を発刊する専門出版社で、ここからもかかる声が増えた印象。マジメで質実剛健な社のお手伝いをするのは毎回とても気持ちよく『建築知識』の元編集長 藤山さんとは一昨年編んだ『スパッとわかる構造建築』という本でご縁が深まった。

藤山さんからは「イラストをふんだんに使ったストーリー仕立ての建築本を作りましょうよ」という話を以前からいただいていた。それは、数年前に某造船会社から依頼されイラストとマンガだけで綴った工作マニュアルを彼がひどく気に入ってくれたところに端を発していたのだが、今年遂にその建築バージョンとして具現化する運びとなった。


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5月、「木造建築を“木”の角度から包括した本にしたい」という青写真を言い渡され、我がFLAT HOUSE styleのアートディレクター大杉氏を伴い制作チームに参加。ライティングの中心には建築家であるアトリエフルカワの古川さん。内容をプロ志向に偏らせないよう紅一点の三島さんがアシスト。

本のタイトルも決まらぬうちにたくさんの建築家や木を専門に扱う関係事務所の見学&インタビューが始まる。秩父の山奥へ森林の現状を見に行ったり伐採現場に立ち会ったり製材所へ社会科見学にお邪魔したりしたのが猛暑始まる7月初旬。その段階でも未だ本のプロットらしきものは生まれずにいた。

一行にエンジンがかかったのは酷暑の続く初秋。記憶に新しい帰宅難民を出した大型台風がやって来た日に我が家へ集合、古川さんと藤山さんの上げたプロットを大杉氏が誌面化し作られた二次ラフをたたき台にして、ライブで僕がそこにイラストをどんどん描き加えてゆく。タイトルも決まり、朝から終電まで時間の許す限り1ページ1ページ丁寧にみんなで話し合い書き上げていった。そしてその後も何回かそんな日を繰り返した。


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本来、本を作るのはこのように参加者全員でじっくりと編み上げて行くというやり方が理想、いや、あるべき姿ではないかと強く思う。広告や企業パンフレットなどの制作会議に出席すると「この人たちはいったいナニをする人だろう??」と思うくらいやたらにずらずらガン首が並ぶことがよくある。

しかしモノを作るにあたってアタマ数の多さにさほど価値はない。最小限の頭脳がそれぞれの能力を隅々まで持ち出すことと、それらをブレンドすることにいかに時間をかけ芳醇なものにするかという事の方が重要であったりする。

しかし超・コスト偏重の社会ではそれは軽視され、作り手と受け手の間に調整管理者として堂々と座るネクタイ締めた方々のお給料をひねり出すために「時間をかけない」という一番してはいけないモノ作りの方法が何ら疑われる事なく遂行されているのが現状だ。そのためにできるものはジツに軽薄短小無味乾燥。フレイムだけで仏つくって魂入れずな物々が「でーきまーした♪」とばかりにじゃんじゃん世間に輩出される。

もちろん行程省略・時間短縮の全部が悪いわけではないがそれがクオリティに反映されてしまうのでは良いはずがない。それが証拠に、結局売れ残り廃棄処分になる印刷物の何と多いことか。そういう虚しいサイクルにはいつまでたってもメスを入れられることがない。

逆に本作りの現場では、著者はおろか編集者とすら顔を会わせずに完了することもそう珍しくない。言われたものを言われたまま描いてハイお疲れさ〜んという個室型完全分担スタイルが現在の本制作の主流だ。上がって来たものを見るとどうも描いたものが本文にそぐわずとんちんかんな印象、なのにそのまま書店に並んでしまったりする。


そんな過度ともいえる短縮分業化が当然となった現在においてここまで手間ひまかけて編まれた今書はかなり稀ではなかろうか。制作者が何度も集まっては一緒に取材をしたり内容を吟味したりとジツに贅沢なつくり方をした。僕もイラストレーターというよりは著者のひとりとして参画した意識が強い。


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家作りで言うならば、さながら大工や左官や建具屋屋根屋がそれぞれの技術を活かし合い完成させる在来工法のようなやり方だったのではないか。でもそれは本を作るにあたって昔の人たちが踏んで来た当たり前の順序を習ったに過ぎないのだけれど。

僕たちは自費出版本でその作り方を踏襲しているつもりだが大手の出版社がその古式ゆかしき方法をなぞるのは稀だ。何せ最小限のコストで最大限の利益を生めという大命題を各社員が背負わされているのだろうから。

とにもかくにもこんなに内容と作り方がシンクロした本に携われたことにシアワセを感じる師走の入りなのです。

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タイトルはズバリ『木の家に住みたくなったら』。マンションや人工樹脂でできた建て売り住宅の蔓延にはもう飽き飽きしたという人たちが増加、その反動で在来木造住宅への注目度が高まる昨今。
しかし、いざ住む・建てるとなると何をどうして良いやら。木の種類や家の種類、家そのものや建築方法の選び方、国産材や外来材、植林の歴史、山林の問題など、学ぶべきことは山ほどあります。それらについてとことん解説しながらも楽しく学べる絵本仕立ての実用書に仕上がっています。

カバーの木目は木を3Dスキャナーで読み取りよりリアルな質感を再現したという凝りよう。しかもカワイイでしょ♪

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徹頭徹尾絵でつづられている
建築誌史上初の「絵本」です。

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『木の家に住みたくなったら』
エクスナレッジ/221ページ/1680円(税込)

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Comments

素晴らしい本です。

僕の塾で、テキストにしたいと思います。

Posted by: ワタナベノリト | 2011.12.01 at 12:50 AM

■ワタナベさん
テキストとは嬉しいですねえ〜ぜひ!
老若男女がじっくりゆっくり読める本と
一同自負しておりますので。

Posted by: arata coolhand | 2011.12.01 at 10:54 AM

お疲れさまでした〜
アラタさんのイラストに負けないテキストになっているかな。
打ち上げ、やりましょう。来年早々のトークイベントも楽しみです。

Posted by: フルカワ | 2011.12.01 at 11:36 AM

■フルカワさん
お疲れさまでした!本当に楽しい制作現場でしたね。

ラストスパート10日間も缶詰ではありましたが
楽しんで仕上げることができました。
つくづく拘るスタッフの人としての質の高さが作品にも
制作中の時間にも反映されるものだと痛感しています。

トークイベント楽しみですね。よろしくお願い致します〜

Posted by: arata coolhand | 2011.12.01 at 01:07 PM

mixi経由でブログ購読させていただいています。
80年代JAMスタに集っていたMODガール(過去)です。
御面識はありませんが、
cool neet smartスタイルに脱帽です。
これからも楽しみに購読させていただきます。

Posted by: たみぃ | 2011.12.05 at 10:40 AM

◆たみぃさん
80年代ならばもうほぼ「同期」ですね(笑)
僕は87年でシーンから一旦姿を消しましたが
00年代になってまたちょくちょく顔を出しています。
もしどこかでお会いしたらゼヒお声をかけてください。
今後ともよろしくお願い致します。

Posted by: arata coolhand | 2011.12.08 at 09:44 PM

Flat House Styleをいつも楽しく読ませていただいてます。こちらの本も気になる!ので、本日早速書店で探してみます!表紙、かわいいですね。こだわられた木目も、あわせた黄色(山吹色?)もとてもすてきです。

Posted by: kushiko | 2011.12.13 at 01:28 PM

◆kushikoさん

拙誌のご高覧ありがとうございます。
発刊元の社風からいってあり得ないほどたくさんの
絵で紡いだ当書、編集者の心意気には脱帽の一冊です。
もちろん内容も解りやすく面白いものに仕上がって
いますのでゼヒご覧になってみてください。

Posted by: arata coolhand | 2011.12.16 at 11:28 AM

ご無沙汰しております。以前、三鷹のオーガニックショップで贔屓にしていただいていた者です。

転職先の工務店でWEBサイト制作を依頼したディレクターさんのオススメで、「木の家に住みたくなったら」を購入しました。

ステキなイラスト!と思ったらアラタさんじゃないですか!ご縁を感じてうれしいです。すばらしい内容で、手放せない本になりました!

Posted by: コーチ | 2012.02.26 at 04:32 PM

◆コーチさん
ご無沙汰ですね!転職なさったんですか〜?
随分G店にも伺っていないので知りませんでした。
工務店?また随分と異業種に行かれたんですね。
でも僕も最近は少なからずそちら方面に関わっています。

拙著のご高覧ありがとうございます。いい本でしょう?
ご推薦くださった方はどなただろう??
くれぐれヨロシクお伝えください(笑)

ご近所のはずなので、お兄さんと一度遊びに来てください。
ここもいつまで住めるか判りませんので…

Posted by: arata coolhand | 2012.02.28 at 12:38 PM

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