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October 2010

2010.10.29

後悔、先に建たずぜよ

今月は前半に冷房を、後半には暖房を入れた。
なんじゃこりゃ。
このマコトにおかしき10月ももう終わってしまうが
二ヵ月後に晦日が来るとはどうも思えない。
夏がついさっきまで隣に居たというのに。

というワケで、前々回で最後に話した
「堅牢な家をわざわざ…」というおハナシを。

Img_1953


少し前の話になるが、梅雨明け間近に
友人と自転車でポタリングをした。
その際、近所にある古い外人向け住宅を見に寄った。
二階建てが1棟、それを挟むように平屋が2棟、
計3棟の木造住宅が並んで建っている。

Img_1952


築年数はパーツなどから見ておそらくどれも40~50年と
いったところだろうか、全棟造りが違っていてジツにそそられる。
潤沢な緑を湛え、周囲の建売り住宅とは出している空気が全く違う。

昨年この並びの存在を知ったとき、一番東側の平屋が空き家に
なっていたので内部を外から覗いたところ和室や玄関があったりと
我が家のような米軍ハウスとはまたひと味違うことが分かったが、
賃貸対象はやはり在日西洋人のようだった。
その後どんな人が入居したのか気になっていたのだが
イヤな予感が的中…。

緑がはぎ取られてむき出しになった地面の上で
パワーショベルが轟音を立てながらくるくる回り
廃材を砕いている風景に直面。愕然とした。
「ああああ~~~壊されている…」

Img_2032


産廃と化した家屋を満載したトラックの下でロープを扱いていたオヤジさんに話しかけると、笑顔で「次はこっちも壊すんだよ」と隣を指差した。


Img_1947


「ナニ~~〜ッッ!こっちもか!?」
よく見ると真ん中の二階家も
いつの間にか空き家になっているではないか。
心臓がバクバクし
アタマに血が上って来た。

昨年来たときは、東側の空き平屋の写真を撮っていた僕に
出かけかけていたクルマをわざわざバックさせて
「なぜ写真なんか撮ってるの?」と猜疑心ムキ出しで訊いて来た
よーく肥えたアメリカ人おかあちゃん一家が住んでいたのに。


Img_1949


ふーっと急襲されたのは倦怠感と寂寥感。しかし、こういうシチュエーションにももう慣れた。ここでぐったりしていても仕方なし、ならば少しでもこの家を残さねばという気持ちが湧き上がり建具などのパーツをサルベージしようという考えにアタマがスイッチ。こっちも成長した。

パワーショベルの運転席で休憩中の若い親方に尋ねると「どうぞ好きなだけ持ってって」という返答が。そりゃあ処理費用が減るわけだから解体業者としてもありがたいだろう。


ただし明後日から壊し始めるからそれまでにという。
我が家のドアを付け替えてくれたK君にもその場で
電話し急遽助っ人として参戦してもらうことにした。

そして翌日、とにもかくにも我々は解体屋への手土産の
ビールを携え昼前から家の中に入り物色を始めたのだが
…踏み入るなり再び絶句。


Img_1957

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な、なんてイイ家なんだろう!!想像以上だった。
今こんな家を建てようとすれば相当な額がかかるだろう。
いや、もう建てられないに違いない。

ああ、これがすべてゴミになるのか…
そう、いつもそうだ。この順序で同様のことを想うのだ。
なぜこんなにいいモノを壊してチャチな新築を建てる??
ナゼこの愚行を誰も止めようとしない??
最後は必ずこの虚しい自問で終わる。
答えは解っている。
でも解ったって仕方のない答えなんだ。

やりきれなさと怒りに近い悲しみの中
僕らは建具を黙々と外して廻った。

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20枚ほどのドアと窓ガラスが
我が家のストレージにねじ込まれた。
達成感などなかった。あるのは敗北感だった。


こういう建物がただ築年数の数字の多さだけで
「価値0円」と判断されるのであれば
近い将来日本から昭和のモダン建築は
完全に消え去るだろう。


後聞の話だがM社の仕業らしい。
いいか、目先のカネのために
バリバリ破壊し拙速な小屋ばかり建て、
数十年経って安普請の薄汚れた
ペンシル住宅ばかりになってから
ああ、昔の街並は良かった~なんて
嘆いても遅いのだぞ。
あわてて「あの素晴らしい街並を再現」
なんつってニセモノタウンをこさえても
遅いのだぞ。

早いところみんながこの宝物に正当な価値を
付けることを促さねば~という気持ちが
また胸の中にこぶしを強く握らせ
ある仕事の実行への導火線に火をつけた。

その青写真のお話はまた次回に。


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あこれもこれもそこもここも…みんな壊され今はもうない。
写真の中にあるだけだ。
この家の詳しいことはいずれ本で語ることにしようと思う。



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