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2010.03.04

ラジオスターの刺激

ご報告遅くなりましたが、無事J-waveで喋ってまいりました。 当日お聴き頂いた皆さん、ご静聴ありがとうございました。
にしてもけやき坂スタジオ、あまりにちっちゃくてびっくり。でもそこは日本人のDNA、ナローな場所には免疫が強く働きしばらく居ると居心地良い空間に早変わり。結果とてもリラックスできるカンファタブルなスタジオでした。

しかし、終わってみれば予想はしていたものの全くの「時間足らず」。 用意したことの2割くらいしか話せませんでしたが(放っておけばあと2~3時間は余裕でしゃべれたでしょう) 美声ナビゲータのレイチェル嬢 も相当平屋に興味をお持ちになられたご様子。 スタッフの方々にさえFLAT HOUSEに興味を持って貰えたということは大収穫だったと言えましょう。

また、今回告知が届かなかった友人知人クライアントの皆々様から「出てたので驚いたよメール」を結構頂きびっくり。それにしてもラジオって、今でも案外聴かれているものなんだなと再認識。そう言われてみたら昔はよく聴いていたっけなァ。

今でこそTVやPCを一人一台当然のごとく持つようになったけれど 僕が少年時代はコドモが部屋におけるパーソナルメディアといえばまだラジカセ(ラジオにカセットテープレコーダーが付いたもの)くらいしかなく、その分随分と前のめりになって聴いていたものでした。

あの頃はTVの音楽番組はまだまだお茶の間色が濃く、それこそTVでは放映されないようなニッチな邦楽や洋楽を知るにはラジオからの情報ソーシングに頼らざる得ない時代で、その分番組側も今より一曲一曲をじっくり聴かせていたのではないでしょうか。

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ラジオといえば、今からちょうど30年前 トレヴァー・ホーン率いるバグルスの『ラジオスターの悲劇』がヒットし、ラジオでは毎日のようにかかっていたけれど、当時のわが国の音楽シーンといえばカテゴリ細分化の進む現在のそれからは想像できないほどスカスカな時代だった。

邦楽といえば歌謡曲かニューミュージック、洋楽といえばハードロックかシンガーソングライター系が各代名詞のように紹介されていたのがせいぜいの当時。「ポップス」という鍋の中に雑然とそれらを放り込んでお客に出しているような、まだまだ大雑把でエッジの甘い時代だった。

洋楽シーンには何とはなく新しい胎動が14歳だった僕にさえ感じられたが、相変わらずの国内音楽シーンにそろそろ物足りなさを感じていたその頃、ラジオの前にいた中学3年生の僕の脳天にビリリと電撃が走った。ほぼ電子音一色なのに60年代調POPなメロディ。当時学校でも新しモノ好きな連中の間ではマスト化していたYMOとも風味が違い、もっとビートが利いててパンキッシュ。ボーカルも載っているし、しかも英詞で歌っているではないか。これって外国のバンドか??と思いきや全員日本人。うーん、新しい&カッコイイ!彼らはPLASTICS!

特筆すべきはフロントメンバーがグラフィックデザイナー、イラストレーター、スタイリストといったビジュアル関連職で、バンドとしてはいわば素人、後列の2名を除けば音楽の門外漢で構成されていたという点。しかもバンドと平行してそれぞれ副業(本業?)をこなしているというエピソードを少ししてから雑誌で読み、そんなことなんてできるの??と当時かなり驚いたのを覚えている。

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今にして思えば、そろそろ日本のTVやラジオにも欧米のパンク・ニューウェイブ(懐かしい響き!)のオルタナティブな空気が流れ始めていた頃で、それらをいち早くキャッチし、具現化できたのはむしろ音楽家ではない彼らのようなビジュアルデザイン業家だったのだろう。

年が明けると彼らを含めた音楽は「テクノポップ」や「デジタルビート」と呼ばれるはっきりとした一本の潮流となりYMO、ヒカシュー、P-MODEL、ジューシイ・フルーツらと共に一世を風靡する。NHKも特集を組んだこのムーブメントの暴風は、じわじわと歌謡界を浸食し、少なからずの影響を与えた。(それにいち早く呼応したのがジュリーだった。サスガ!)

バンド自体は1年後にメンバー間の方向性の違いであっさり解散するが全米・欧州でツアーも敢行、お世辞抜きの大反響&大成功を収めている。B-52'やラモーンズ、トーキング・ヘッズなどの当時の第一線、現在でも名の残るビッグネームアーティストたちとの共演も実現させていることはあまり知られていない事実だが、今以てして彼らのバンドクオリティの高さとセンスの確かさを証明する証であろう。


この厳寒の時期になると高校受験当時が蘇ってしまい、気持ちが中学3年に戻ってつい聴いてしまうPLASTICSは、今聴いてもまったく古さを感じさせないサムシングを持っている。楽曲センスもさることながら、歌詞もコピーが氾濫するデジタル社会やブランド偏重主義、時間割社会を揶揄・批判するアイロニーに溢れており、現在の社会にも十分当てはまる先見性だ。なかんずく1stアルバムは音楽史に残る上質なポップミュージックアルバムの条件をキッチリ満たしている。

僕ら世代がPerfumeの中田サウンドやK-POPなどにあまりアレルギーを示さずいられるのは1979・80年のあのデジタル・ビートの季節を通過しているからではなかろうかと思う次第。

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