『FLAT HOUSE LIFE』 本日発売です
相変わらず古い平屋の取り壊し、過剰なリノベーションが進む一方で、工場で作られた部品を現場でパチパチと嵌めて組むだけのペンシル住宅や、自らが景観を壊しておいて「自然豊かな○○に建つ・・・」などと広告する巨大マンションの建築が止まない。
私が今春転居するまで暮らしていた平屋集落に住んでいた頃、中にある物件が空くたびにwebなどで募集をかけて住人を募っては紹介して来たが、内覧に来てくれた大勢の「古い平屋に住みたい」という人々でさえ、いざ決断の段階になると古い平屋なんだから当たり前だよ、というような細かい不便点・不満点を上げて尻込みして行ったケースが実に多かった。
古いものにある程度理解ある彼らでさえも二者択一となった時には、結局駅近・築浅マンション的な「都心に近くて便利が一番」という「利便性偏重主義」が顔を出してしまうという、その潜在意識に強くある不便に対する強迫観念の根深さに深く考えさせられてしまった。
そうか、この無意識の意思こそが古いものを壊す言い訳をつくらせる大きな現況なのだな、と。
しかし、これをただ嘆いていても事態は好転しない。先ず人々の価値観や意識、考え方の根本を変えて行くことをしなくてはいつまで経ってもこのまま、いや悪化の一途を辿るだけだろう。古い平屋の魅力とそこに住む人たちのイキイキした暮らしぶりを記録に残し、キチンと世間に提示しなければならないという強い使命感に煽られた。それが今書発刊の大きな動機だ。
都下に僅かに残存する米軍ハウスをはじめ、文化住宅、70年代のモダン住宅などを約10年間に渡って取材。作り上げたデータ&コネクションを元に、今年5月から3ヶ月再取材を敢行しこの夏を使って書き上げ今月無事脱稿。そうして完成させた一冊『FLAT HOUSE LIFE』が本日書店に並びます。
http://www.marbleweb.net/books/catalog/data/index.php?no=369
もちろんご購入頂ければ嬉しい限りですが、立ち読みでも全く結構。とにかく先ず手にとってご覧いただきたい。本屋になかったり書店が遠いという方は内部を少々アップしますので先ずそちらをご覧ください。
小さな石でも投じることを始めれば事態は少しずつ変わって行くはず。この本が人々に古い建物を見直させ、そこに住もうという気持ちを起こさせる起爆剤・土地改良剤の役割を果たせたら幸甚です。
■著:アラタ・クールハンド
■判型:A5判変型
■項数:192ページ
■定価:1,995円(税込)
ISBN978-4123902380
■発行:マーブルトロン
■発売:中央公論新社
■発売日:09年10月29日
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