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July 2007

2007.07.06

僕とストライクスの季節

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今から遡る事20余年前、僕には2つのアイドルバンドがいた。
しかも運よくごく身近に。


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ひとつはザ・ブルーハーツ。そしてもうひとつがザ・ストライクスだ。両者とも親交が篤かったが、前者が優しい兄たちのような存在だったのに比べるとストライクスは仲のいい同級生、いや近所の悪ガキ仲間といった関係だった。偶然にもメンバーの年齢構成が当時の我がバンドとウリふたつで、全員東京出身の江戸っ子バンドというところも一致。そのせいもあってか意気投合、ホントによく一緒にライブをやった。
メンバーの大半が四谷っ子で、育ちが良さそうなのに不良のニオイがした。ガール・グループスのカバーで人気を博していたペイズリー・ブルーのメンバーに「アラタ君は絶対好きなはず。カッコイイから必ず観て!」と勧められたのが85年の晩秋。そういう進言には比較的素直に従う僕は迷うことなく海馬にその名を入力した(だって名前がイカしてるじゃないか!)


東京新宿にあるライブハウス『STUDIO JAM』で現在も続く『March Of The Mods』は当時月イチで開催されており、僕は毎回ドレスアップしデコレイトしたスクーターで出かけていた。当時は昨今のようにカバーだけをやるバンドや英詞に特化したバンドはごく僅かで、日本語によるオリジナル曲を演奏することが現在のシーンより強く求められていた時代だった。しかも東京のモッズシーンは当時徐々に細分化され始めた他ジャンルのR&Rシーンより、個々の持つ世界観やフィロソフィーを重視するカラーを早い段階から持っていた。そのうえ曲自体の良さはもちろん、ダンサブルか・スタイリッシュか否かなど演者の日常のアティテュードに至るまでオーディエンスの要求がジツに厳しい現場だった。

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そんなJAMのステージにある晩4つの影が現れた。全員黒のタートルにホワイトデニム、長めのクルーカット。フロント3人は粒が揃っていてステージのシルエットがいい。バンドには大切なファクターだ。足元をチェルシーブーツで固めビンテージのグレッチをハイポジションに構えて1.2.3.4の掛け声と共に『コマンシェ』や『シミー・シェイク』をマージーライクに演った。彼らこそ噂のザ・ストライクス~ 飛びぬけてうまかった!そしてカッコ良かった!ルックスにそぐわない荒々しいステージアクト!そう、キャバーン時代のビートルズ!誰もがそう連想したに違いない。歌詞が日本語になった頃にはホールのあちこちで黄色い嬌声が上がり、空気を完全に入れ替えてしまった。

キレのあるライブアクトやルックスにも魅了されたが、あの有名な六本木某クラブでやっているビートルズコスプレショーのそれとは違い、カバーより日本語で歌うオリジナル曲にこそ魅力があった。僕はそこに驚いた。そして総じて何か「本当のバンド」が登場した、という印象を強く持った。

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とんがったレジスタントな詞を好むモッズの前で自作のラブソングを演奏し認めさせたというのも快挙だったが、モッドの中には彼らを当時既に解散していた伝説のマージービートバンド/ザ・ブレイカーズに重ねて見ていた向きもあったかも知れない(僕はザ・ターキーズを連想)。がしかし、僕が何よりも注目していたのは、彼らのバンド・コンセプションの高さあった。先ず、全員必ず揃いの衣装でステージに立つという不文律が遵守されていたこと。これにはバンドセットのあるべき姿を改めて再認識した思いだった。オフ・ステージでもバンドロゴと担当パートが背中に刺繍されたドリズラージャケットを全員が羽織り、サウンドに則したレトロ・アンタームドな空気を忠実に醸すことに徹していた。またスーツオンリーに陥りがちなシーンの中で、件のタートルニットや黒のベストに細めのニットタイを合わせたりと60S愛好家たちの琴線に細かく触れるような姿勢はとても新鮮に映った。

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そして何より驚いたのは(初期の彼らを知っている方ならご存知のように)アマチュアのくせにマネージャーまでいたということ!ステージがはねると必ず楽屋では5人による反省会が催され、忌憚なくゲキを飛ばし合っていた。当時はまだ高価だったハンディカムなんぞを導入し、それを見ながら細部にうがってのパーフォーマンスの研鑽会。まだ学生気分で行き当たりばったりのライブをしていた僕にとってそれは衝撃の光景で、彼らの達観度には大きな刺激を受けたものだった。

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彼らはライブというものはただ演奏を聴かせるだけではなく、「観せる」ということ、しいては「空気感」を提供する場であるということ、そしてオーディエンスはその空気を吸いにやってくるのだということを早い段階からごく自然に自覚していたのだろう(当時プロにだってそんなバンドはいなかったのではなかったか!)それゆえアイデンティティが先ず骨子に毅然とあり、その上にビジュアルやサウンドが血肉となって「バンド」が図面に沿い忠実に構築されていたのである。そしてそれがジツに上手いのがストライクスだった。今にして思えばあのダっサイ80年代初頭にハタチそこそこのガキ共がそんなことをやってのけていたワケだからその早熟度加減には驚くばかりだ。彼らのこの方法論はその後徐々に芽吹き、今日に隆盛するジャパニーズ・ガレージシーンに多大な影響を与え、ひとつのマスターピースとなるのである。

最初のステージングを見て以来とにかく僕はすっかりノックアウトされてしまい、都内のライブハウスをトレースして廻った。どういうきっかけだったかは失念したが、楽屋に入ってはお互い好きな音楽や映画の話をするまでの仲になり、共演も果たすようになった。そしてクワトロやクラブ・チッタでの彼らのワンマンライブの際、ゲストシンガーとして幾度となくステージに招いてもらったりした。
出会ってからの10年間は彼らと共にあったと言って過言ではない。秋風が吹く頃には今でも『Peanuts』が僕のクルマの中に流れるのはその証。そんな彼らに今回このような形でまた関われるのはこの上ない大きな幸せである。


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『A Shot Of THE STRIKES /the complete works of the early STRIKES』(Mint Sound)
現在アナログでしか入手できなかった(しかも高価!)彼らの初期音源がミント・サウンドからこのたび再リリースされる。ナント2枚組み55曲入りのボリューム。もちろん未発表曲もたっぷり入ってしかも初回はDVD付き(これがスバラシイ!)。当時を知っている方はもちろん、未体験の方も彼らの魅力と熱いバイブレーションを堪能できる文字に偽りナシのお買い得盤です~ やっぱり改めてカッコイイわ、やつら。

THE STRIKES official website
【STRIKERS WALK】
http://www.the-strikes.com/

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